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ブエノスアイレス穀物取引所は2010/2011年度トウモロコシの生産予測を上方修正(アルゼンチン)

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コルドバ州、サンタフェ州、ブエノスアイレス州などの主要生産地で復調

 ブエノスアイレス穀物取引所(BDC)は4月14日、2010/2011年度(3月〜2月)のトウモロコシに関し、収穫は36%が完了、生産量は依然として前年度をかなり大きく下回っているものの、前回の予測(3月31日)から50万トン引き上げ2000万トン(前年度比86%)となる見込みと発表した。昨年後半はラ・ニーニャの影響による水不足が懸念されたが、年明けから主要生産地(コルドバ州東部、サンタフェ州南部、ブエノスアイレス州北部、エントレリオス州西部)で生産性が向上したため、全国の平均単収が1ヘクタール当たり6.64トンまで回復したことによる。
 アルゼンチントウモロコシ協会(MAIZAR)によれば、国内のトウモロコシ需要は毎年約800万トン弱と一定していることから、今期も1200万トンは輸出に振り向けることが可能と期待している。
図1

ブエノスアイレスにおけるFOB価格は8割強上昇

 世界銀行は同日、2011年第1四半期(1〜3月)の世界の食料価格が前年同期に比べ36%も上昇したことを発表した。品目別では、トウモロコシ73.8%、小麦69.1%、大豆35.6%、大豆かす18.3%、牛肉30.3%が挙げられており、飼料穀物と畜産物の顕著な上昇がうかがえる。シカゴ市場でもこの1年間、飼料穀物価格が騰勢を強めており、トウモロコシの先物(期近)は、4月10日に1ブッシェル(約25.4キログラム)当たり781.75セントと2008年6月以来、最高値を更新した。これに同調するように、ブエノスアイレスでは、トウモロコシのFOB(本船渡条件)価格が2010年4月の1トン当たり167ドル(約13,844円;1ドル≒82.9円)に対し、2011年4月は314ドル(約26,031円)となり、1年間で約88%の上昇を示している。
 アルゼンチン国内では、輸出向けのみならず国内の家畜生産者や加工業者からの引き合いも強く、集荷業者は水分調整などの保管経費を負担してまで荷を集め、顧客ニーズの対応に迫られているようだ。

有力な輸出先国として中国とも接触

 トウモロコシ価格の世界的な高騰の一因として、中国の大規模な輸入が挙げられる。米国農務省(USDA)によれば、中国のトウモロコシ輸入量は、2009年47千トン、2010年1296千トン、2011年1500千トン(予測)となっており、近年、中国は輸出国にとって最も注目される国際市場の一つである。
 現在、アルゼンチンは生産量の約85%が遺伝子組み換えトウモロコシであるため、遺伝子組み換えトウモロコシの使用を認めていない中国へは輸出していない。このような中、4月5日付けのブエノスアイレスの地元有力新聞ラ・ナシオンでは、中国からの代表団が3月末にアルゼンチンを訪問し、トウモロコシの生産状況について確認したことが報じられた。この中で、アルゼンチン農牧漁業省(MINAGRI)次官のコメントとして、中国のトウモロコシ備蓄は不足していることから、早ければ本年7月頃にもアルゼンチンから中国へトウモロコシの輸出の可能性が示唆された。
 アルゼンチンと中国は昨年11月30日、農畜産物の貿易協定に合意し、2011年にはトウモロコシの貿易に関する衛生条件を定めることとしている。
 今後、トウモロコシの国際需給がひっ迫する中、中国が遺伝子組み換えトウモロコシの使用を認めるなど両国の動き次第では、国際価格にも大きな影響を与えそうだ。


参考:中国と農畜産物貿易に係る関係を強化(アルゼンチン)(2010年12月24日)
【星野 和久 平成23年4月19日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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