2010/11年度の農家経営状況、肉用牛専業と酪農で明暗が分かれる(豪州)
肉用牛専業経営は、引き続き赤字の予測
豪州農業資源経済科学局(ABARES)が4月19日に公表した、農家の経営状況に関する農家調査「ファームサーベイ」によると、2009/10年度(7〜6月)における肉用牛専業農家の農家収益は、多雨により出荷が進まず、販売収入が減少したため、1戸当たり2万4千豪ドル(211万2千円:1豪ドル=88円)の赤字となった。
2010/11年度については、赤字幅が減少するものの、1万4千豪ドル(123万2千円)と引き続き赤字が予測される。これは、肉牛購入費用は減少するものの、修繕費が増加するため、現金支出が前年度比1%増の21万7千豪ドル(1909万6千円)と、わずかながら増加するためである。
飼料生産の状況が良好なことから、牛群の保留傾向は強くなると見込まれるものの、現時点では、と畜重量の増加や旺盛な需要を反映し、出荷価格が高水準となっているため、出荷が進んでいる地域がある。このため、今後の価格動向によっては、赤字幅が圧縮される可能性もある。
なお、ABS(豪州統計局)によると、豪州の主要な肉牛飼養経営である肉用牛専業農家戸数は、2010年6月時点で前年比3.6%増の40,854戸と前年を上回り、全農家戸数の約3割を占めた。
酪農家は、飼料コストの減少から黒字に転じる見込み
2009/10年度における酪農家1戸当たりの農家収益は、乳価の低迷により、現金収入が大幅に減少したため、1400豪ドル(12万3千円)の赤字となった。
中でも主要な生産地であるビクトリア(VIC)州は、農家所得が5万1千豪ドル(448万8千円)と、過去10年平均の6割程度であったため、21,200豪ドル(186万6千円)の赤字となった。また、VIC州およびニューサウスウェールズ(NSW)州南部の地域では、干ばつに伴うマレー・ダーリング川のかんがい用水使用可能量の減少などを背景に、飼料費が増加したことも収益悪化の要因である。
一方、2010/11年度については、加工向け乳価が引き上げられることに加え、かんがい用水使用可能量の増加から飼料費の減少が期待出来るため、5,000豪ドル(44万円)の黒字が予測される。なお、VIC州についても、4,000豪ドル(35万2千円)の黒字になるとみられる。
【岡田 岬 平成23年4月25日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8693