乳製品の輸入が大幅に増加(ブラジル)
2011年第1四半期は、前年同期比83.4%増の約3万8000トン
ブラジル商工開発省貿易局(SECEX)によると、2011年第1四半期の同国の乳製品輸入量は、前年同期比83.4%増の約3万8000トン(製品重量べース)と大幅に増加した。
品目別では、粉乳類が、同123.8%増の約2万3000トン、チーズが同156.2%増の約7700トンと大幅に増加した。両品目とも、アルゼンチンからの輸入が50%以上、次いでウルグアイとなっている。なお、ブラジルでは、2009年および2010年と2年連続で、輸入が輸出を上回っている。
国内消費の増加が原因
この原因は、主に乳製品の国内消費が順調に増加していることにある。米国農務省(USDA)によると、2006年以降、同国の主要乳製品の消費量は、順調に増加している。
ブラジル地理統計院(IBGE)によると、同国の国内総生産(GDP)の成長率は2006年以降ほぼ右肩上がりで上昇し、2007年が6.1%、2008年が5.2%、2009年はマイナス0.6%となったものの、2010年は7.5%となり、同年のGDPはドル換算で2兆898億ドル(約169兆2700億円、1ドル≒81円)となった。ブラジル中央銀行によると、2011年のGDP成長率は4.0%と予測されている。この景気上昇により、低所得者層を中心に所得が著しく向上し、食生活の向上に伴う乳製品の消費が増加している。これを受け、国内生乳生産も順調に増加しており、2010年は前年比5.8%増の約308億リットル(予測値)となった。さらに、現在のレアル高ドル安傾向が輸入増加に拍車をかけている。
大幅な輸入増加が続いた場合、国内生乳生産に影響を及ぼす可能性
しかしながらその一方で、輸入の大幅な増加が続けば、今後の国内生乳生産に影響を及ぼす可能性を懸念する業界関係者もいる。
現地報道によると、ブラジルの生乳1リットル当たりの生産コストは、0.53ドル(約43円)であるのに対して、アルゼンチン、ニュージーランド、米国は0.35〜0.4ドル(同28〜32円)、また、ブラジルの年間1頭当たりの搾乳量が1297リットルであるのに対して、アルゼンチンは5980リットル、米国は9331リットルと、生産性でも差が大きい。
2010年の生乳生産者価格は、国内消費増加などにより、1リットル当たり0.84レアル(約44円、1レアル≒52円)と2003年以降過去最高となったものの、2011年に入ってからは下降気味にある。同年4月は、前年同月比5.9%安の同0.8レアル(約41円)となった。今後も大幅な輸入増加が続いた場合、価格ひいては生産に及ぼす影響が注目される。
【石井 清栄 平成23年7月11日発】
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