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米国トウモロコシの作柄は気温上昇により例年に比べやや不良

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 米国農務省(USDA)は8月8日の「Crop Progress」(毎週発表)において、主要18州における8月7日時点のトウモロコシの作柄について、指標となる「優」と「良」の占める割合を前週と比べ2ポイント低下の60%と発表した。作柄の悪化は、全米における気温上昇がトウモロコシの生育に影響を及ぼしたことが主な要因である。今般、気温上昇の影響を受けているイリノイ州の現地調査を行ったところ、その結果を報告する。

コーンベルト南部の州において作柄が悪化

 2011年のトウモロコシの作柄(「優」と「良」の占める割合)は、昨年を大きく下回って推移し、7月中旬以降は過去5年平均も下回っている(図1)。
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 7月中旬より作柄が悪化した主な要因は、主産地であるコーンベルト地帯の気温上昇である。ネブラスカ州、ミネソタ州などコーンベルト北西部地域は天候に恵まれ良好な作柄を維持している。一方で、イリノイ州、インディアナ州などコーンベルト南東部地域は気温上昇、乾燥気候の影響を受けており、気温上昇が始まった7月中旬以降それらの州で作柄が悪化している(図2)。
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イリノイ州における作柄の状況

 7月に入って作柄の悪化が著しいイリノイ州の現地に入り、7月の気温上昇、乾燥気候のトウモロコシへの影響について、トウモロコシ生産者、生産者団体などを対象に調査を行った。
 その結果は以下の通りである。
(1) 州北部・南部は作柄が良好であるものの、州中部は熱波の影響を受け、作柄が悪化している。
(2) トウモロコシを作付した土壌にヒビが入っているほ場もある。干ばつというレベルではないものの乾
   燥している状態といえる。
(3) 受粉期は乾燥や高温の影響により受粉がうまくいかず、穀粒が欠けて、穀粒の並びが直線ではな
   く歪んで配列されるような状態となったものが散見される。
(4) 気温が高いと栄養分が十分に実に行き渡らず、
  ・仮に受粉したとしてもトウモロコシの先端部分に実がつかない状態となる、
  ・穀粒の厚みが薄くなる、
  ・穀粒にへこみが出る、
   などの異形がみられる。
(5) 穀粒の厚みは8月の降雨次第で増す可能性があるが、先端の成長不足は回復が困難である。
   また、単収については、現時点で当初想定より1割近く減少する見通しである。

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8月11日にUSDAが公表するトウモロコシの需給見通しに注目

 米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)は8月11日、2011/12穀物年度(2011年9月〜2012年8月。以下、「年度」)におけるトウモロコシの需給見通しを公表する予定である。同見通しは毎月公表されているが、8月の見通しでは、2011/12年度の単収について、過去20年間のトレンドに基づくこれまでの推計と異なり、初めて実際のほ場調査を基にトウモロコシの単収が公表されることとなっている。
 2011/12年度の単収については、コーンベルト南東部の気温上昇など下げ要素がある一方で、ネブラスカ州やミネソタ州などコーンベルト北西部においては、天候が良好で増収が見込めるなどの上げ要素もある。USDAの現在の単収は、1エーカー当たり158.7ブッシェルと推測されている。7月のコーンベルト地帯の気温上昇を踏まえて、コンサルタントなど関係者の多くは、自らの単収予測を下方修正する傾向にあるが、USDAが8月11日に公表する見通しにおいて、7月以降の天候をどのように単収に織り込むのか、関心が高まっている。
【上田 泰史 平成23年8月10日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4396