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2011年上半期の鶏肉輸出は好調に推移(チリ)

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上半期輸出量は前年同期比39.4%増

 チリ農業省農業政策・調査局(ODEPA)によれば、2011年上半期(1-6月)の鶏肉貿易状況(表1)について、輸出量は約3万8023トンで前年同期比139.4%、輸出額は約9294万7000ドル(約72億4987万円;1ドル≒78円)で同244.4%となり好調に推移していることが分かった。
 鶏肉輸出は2大パッカー(AGROSUPER社、ARIZTIA社)でほぼ100%行われている。生産工程は企業化され、ヒナ供給から繁殖・肥育、処理・加工、流通・販売まで一貫したインテグレート方式により行われており、海外との競争に向けて計画的な低コスト生産を行っている。
 国民1人当たりの鶏肉年間消費量は、近年、33キログラムで安定的に推移しており、鶏肉は最も消費量の多い動物性たんぱく源とされる。輸出パッカーによれば、2010年2月のチリ中南部大地震でヒナ供給元となるふ化場が壊滅的被害を受けたため、同年の生産のほとんどは国内向けに消費されたとのことだ。
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日本向けは前年同期の約4倍

 2011年上半期の輸出量を仕向け先別に見ると、日本向けは約2502トンで前年同期比417.4%と著しく増加しており、すでに2010年の年間輸出量を超えている。チリ養鶏生産者協会(APA)によれば、これまで高病原性鳥インフルエンザの発生が確認されていない南米大陸の鶏肉は、日本をはじめ世界の輸入国からの需要が大きい。中でも価格の安いブラジルは世界一の輸出国に成長した。しかし、最近はブラジル国内の物価上昇に伴い鶏肉の輸出価格も上昇基調にあるため、輸出時における価格優位性はなくなりつつあり、その代替としてチリ産鶏肉の需要が徐々に伸びていると分析する。

日本の輸入単価はブラジル産と拮抗

 2011年上半期の日本の鶏肉輸入状況(表2)を見るとブラジルが約80%を占め、チリは1%未満とわずかとなっている。2004年にアジアで鳥インフルエンザが大流行したため、それまでタイ、中国に頼っていた鶏肉輸入の代替として、当時、価格の面で競争力のあったブラジルの輸入量が急増し現在に至っている。
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 日本への鶏肉輸入価格を見ると2010年上半期以降、ブラジルとチリの輸入単価(CIF)はほぼ同水準で推移(図1)しており、2011年上半期は、ブラジルが1キログラム当たり276.7円、チリが同267.6円となっている。このことから、現時点では、ブラジルとチリは輸入価格が拮抗しブラジルの価格の優位性はないと言える。さらに、2007年9月に日本-チリの自由貿易協定(FTA)が発効し、現在、チリの冷凍鶏肉カット製品の日本への輸入関税率は8.5%となるが、ブラジルは同11.9%である。このようなことから、APAの分析のとおりブラジルの価格優位性がなくなり、チリ産鶏肉の需要が伸びていることも理解できる。
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2011年下半期も日本向け輸出は増加の見込み

 自由貿易を推進するチリは、従来より海外のニーズを念頭に鶏肉生産を行っており、このため、輸入国サイドにおけるメリットは価格以外にもあると考える。例えば、食品衛生上の品質について国際基準に基づく水準が確保されること、鶏肉処理の機械化により品質が常に安定していること、高病原性鳥インフルエンザなど重大な家きん疾病がないこと、飼料は価格の安い近隣国から調達可能なこと、生産や輸入飼料のトレーサビリティーが確立されていることなどが挙げられる。特に日本向けのブラジルと比べた場合には、生産地から輸出港までの国内移動距離および日本までの海運輸送が短いため輸送コストが安価なことは大きなメリットと言えよう。
 APAによれば、鶏肉の生産コストに占める飼料コストの割合は約7割とするが、これをいかに低く抑えるかが生産コスト削減のカギとなる。ODEPAによるとトウモロコシ輸入量は(図2)、2010年1-6月は26万4600 トン、このうち最も多いのはアルゼンチン(77.7%)、2011年上半期は同18万5700トン、同パラグアイ(84.5%)である。2010年は地震の影響からトウモロコシの輸入量は増加したが、チリはこれまでトウモロコシ消費の約4割は自国での生産が可能であり、自給できない残り約6割についても、世界有数のトウモロコシ生産国である隣国アルゼンチンやパラグアイから安い輸送コストで調達することが可能だ。
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 以前、ブラジルの鶏肉関係者から聞いた話では、ここ1年ほど、ブラジル国内の鶏肉価格は上昇基調にあることから、生産業者は手続きの煩雑な輸出よりは、手間がかからずかつ価格の良い国内向けに供給を希望する傾向にあるとのことであった。現在のところ、2011年下半期もブラジルからの輸出価格が下がる様子はないことからすると、チリ産鶏肉の日本への輸出量が今後ますます伸びる環境は、十分整っていると言えるであろう。
【星野 和久 平成23年8月15日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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