外資による農地の所有割合は1割程度(豪州)
豪州統計局(Australian Bureau of Statistics、以下「ABS」)は9月9日、2010年12月時点における農地や農業用水利用権の外資所有実態調査の結果を公表した。この調査は、中国などの外資による農地買収が最近増加していると懸念する声を受けて、連邦政府がその実態を把握するために行われたもので、今回が初の実施となる。
農地の外資所有割合、QLD州で12%、産業別では畜産は5%未満
調査結果を見ると、外資所有の農地面積は約4500万ヘクタールと、豪州全体の農地面積約3億9800万ヘクタールの11%を占めた。また、農業用水の利用権については、9%が外資による所有であった。なお、外資の農業関係企業数は1294である。
農地の外資所有割合を州別に見ると、北部準州が24%(1412万ヘクタール)と最も大きく、豪州の総農地面積の1/3を占めるクイーンズランド州では12%であった。一方、ビクトリア州では外資の所有割合が1%未満と、外資による農地買収がほとんど行われていないことが明らかとなった。
産業別では、総農地面積の9割以上を占める「羊、肉牛および穀物」において、外資の農地所有割合が12%であったが、このうちの「フィードロット」については4%にとどまった。さらに「酪農」、「養鶏」などの畜産業はいずれも5%に満たない水準であった。
また、「フィードロット」における農業用水利用権については、その量は少ないものの、外資の所有割合が49%と高水準になっている。これは、大規模なフィードロットの多くが外資による運営であることなどを反映した結果とみられる。
農業関係者は引き続き外資参入について注視する方向
現地報道によれば、今回の結果について生産者団体などの関係者は、「想定していたよりも外資の占める割合は低かった」としているが、引き続き外資参入の動向については注視すべきとの声が大勢を占めている。現在、外資による農地の取得に当たっては、当該土地の総資産額が2億3,100万豪ドル以上の場合に豪州外国投資審査委員会(Foreign Investment Review Board) の認可が必要となっているが、この額を引き下げるべきとする意見も一部にみられる。
【前田 昌宏 平成23年9月13日発】
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