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欧州委、10/11年度の生乳供給実績を公表

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超過国5カ国からの課徴金額は5557万ユーロ

 欧州委員会は、10月18日、2010/11年度における生乳供給量を公表した。EUの生乳クオータ(4月〜翌年の3月)制度に基づいて、各加盟国は9月1日までに前年度における自国の生乳供給量をEUに報告することとなっている。10/11年度でクオータを超過した国は、デンマーク、オランダ、オーストリア、キプロスおよびルクセンブルクの5カ国で、前年度の3カ国から2カ国増加した。(表)
 生乳クオータには、生産者が乳業メーカーに出荷する「出荷クオータ」と生産者が消費者に直接販売する「直接クオータ」があるが、今回超過した5カ国のうちデンマークとオランダは、両方のクオータで超過している。
 生乳クオータを超過した場合、課徴金(超過分100キログラム当たり27.83ユーロ(約2,949円:1ユーロ=106円))が課せられる。10/11年度の課徴金は5カ国で5557万ユーロ(約58億9千万円)となり、09/10年度の1900万ユーロ(約20億1千万円)の約3倍増加した。
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 一方、EU全体でみると生乳供給実績は生乳クオータを6%下回ることとなり、未達率は09/10年度の6.9%から縮小することとなった。10/11年度生産量が増加した要因は、当該年度における乳製品価格が高水準で推移したことを背景に、生乳価格が高値で上昇したことが影響したものと考えられる(図)。
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 また、EUでは、2015年の生乳クオータ制度撤廃に向け、毎年1%ずつ段階的に生産割当量を引き上げている。欧州委員会のチオロシュ委員(農業農村開発担当)は、超過量が09/10年度を上回ったことを受けて「2015年にはクオータ制度を廃止することが採択されているが、各国は未だこの規則を守る必要がある。」と乳製品価格が高騰している中で、安易な生乳生産拡大には苦言を呈した。また、同氏は、「生乳クオータ制度廃止に伴って、酪農生産構造が変化し、酪農経営が厳しくなることも予想されるが、10月に提出されたCAP改革案において、EUの酪農が持続的かつ安定的に経営できる方策も盛り込んでいる。」と、CAP改革後もEUとして持続的な酪農経営の維持についても言及している。
【矢野 麻未子 平成23年10月26日発】
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