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ブラジル・フーズ社、アルゼンチンに進出

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業界第6位の鶏肉パッカーなどを買収

 ブラジルの最大手鶏肉パッカー、ブラジル・フーズ(BRF)社は10月3日、アルゼンチン鶏肉業界第6位の鶏肉パッカー、AVEX社をBRF社の旧親会社であるSadia Alimentos SA社を通じ、5530万ドル(約43億1000万円、1ドル≒78円)で買収したと発表した。合わせて同社は、アルゼンチン最大のマーガリン製造会社Danica社も今回9470万ドル(73億9000万円)で買収した。買収に係る負担割合は、BRF社が3分の2(自己資金)、アルゼンチンの持株会社Miguenes社が3分の1となっており、今後は、両社により設立された合弁会社のBRF ARGENTINA社がAVEX社およびDanica社を管理することとなる。
 AVEX社は、コルドバ州リオ・クアルト市にある鶏肉パッカーで、従業員は494名、週当たりの処理能力は、75万羽である。2010年の販売高は、6680万ドル(52億1000万円)であった。国内販売量は、近年2万9000トン前後で推移していたが、2011年上半期は、前年同期比80%以上増の2万3300トンとなった。一方、輸出については、近年急増しており、2010年は2008年に比べ3倍の1万2200トンとなった。2011年上半期は、全販売量の18%に相当する5000トンが輸出され、チリ(丸鶏)や中国(手羽先)、EU(胸肉)などに輸出された。

輸出ポテンシャルの高さを秘めたアルゼンチン鶏肉産業

 アルゼンチンでは、2011年上半期の実質国民総生産(GDP)成長率が前年比9%以上と近年経済が好調の中で、消費者のし好の変化や牛肉価格の高騰による代替需要の影響を受け、国内消費が旺盛である。
 アルゼンチン農牧漁業省(MINAGRI)によると、2010年の1人当たりの鶏肉消費量は、2005年に比べ18.4%増の34.4キログラム、これを受けて生産量は同58.9%増の159万7000トンとなった。2011年1〜8月の消費量は、前年同期比14.6%増の37.7キログラム、生産量は同11.3%増の114万7000トンとなった。
 こうした中で、今回BRF社がAVEX社を買収した理由としては、ブラジル同様に鳥インフルエンザの発生がなく、以下のアルゼンチンの鶏肉産業の輸出ポテンシャルの高さに注目したものとみられる。

1 価格優位性
  アルゼンチンでは、飼料用穀物が豊富であることなどを背景に企業経営によるインテグレーションが 進展し、ブラジルよりも低コストで輸出している。2010年の同国の輸出価格(FOB価格の年間平均価格) は、ブラジルに比べ9.9%安の1トン当たり1508ドル(11万7600円)である。
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2 有利な為替環境
  近年、ブラジルの為替動向がレアル高ドル安傾向にあることに対して、アルゼンチンでは2002年の 変動相場制の導入以降、ドル高ペソ安傾向が続いている。最近もその傾向は続いており、2011年10月 末は、2010年1月末に比べ10.9%安の1ドル当たり4.24ペソ(約76円、1ペソ≒18円)となった。

3 輸出拡大に向けた業界の積極的な取り組み
  アルゼンチン養鶏加工協会(CEPA)は、さらなるインテグレーションの推進、生産施設の自動化、冷 蔵施設の整備、衛生管理の強化などを盛り込んだ2017年までの「鶏肉産業成長計画」を策定し、2017 年までに輸出量を65万1000トン(2010年に比べ161.4%増)と目指している。

BRF社社長、アルゼンチンを世界の一大食料輸出基地に

 現地報道によると、ジョゼ・アントニオ・ド・プラド・ファイBRF社長は、今回のアルゼンチンへの進出に対し、「投資リスクの観点から、アルゼンチン市場を熟知している現地企業を共同出資者としてアルゼンチン市場に進出したい。」と述べ、また、同国は輸出競争力ポテンシャルの高さから、南米が世界の食料供給基地となりつつある中で、同国に1大輸出基地を設ける絶好の機会であるとしている。
 一方、Miguenes社のカルロス・ミゲーネス社長は、「巨大企業BRF社との合弁企業設立によるAVEX社などの買収は、今後のアルゼンチンの食品産業の世界市場進出を考慮するとメリットであり、同国は「世界の穀倉地帯」から「世界のスーパーマーケット」へと変貌しつつある。」と述べた。
【石井 清栄 平成23年11月7日発】
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