2011/12年度トウモロコシ生産は過去最高の見込み(アルゼンチン)
11月後半で作付は7割以上終了
世界第2位のトウモロコシ輸出国であるアルゼンチンの農牧漁業省(MINAGRI)によると、同国の2011/12年度産(3月〜翌年月)トウモロコシの作付は11月24日現在で71%まで終了しており、作付面積は余剰農地の利用により前年度比6.6%増の約486万4000ヘクタールとみられている。コルドバ州やサンタフェ州などでは1月のラ・ニーニャの影響による干ばつを避けるため、先月から今月にかけて作付が行われる。また、サルタ州やフフイ州などの北部の州では、は種の時期を遅らせる技術の進展により、来月に作付が行われる。
業界の生産見通しは過去最高の見込み
こうした中、トウモロコシの生産および輸出業者から構成されるアルゼンチン・トウモロコシ協会(MAIZAR)と流通業者から構成されるアルゼンチン油産業界(CIARA)などに現地で聞き取りを行ったところ、同年度産トウモロコシの生産・輸出見通しなどについて、以下の見解が得られた。
1 2011/12年度産トウモロコシの生産・輸出見通しなどについて
MAIZAR は、このまま作付が進展し適度な降雨が続くなどの条件であれば、2900万トンに近づくかそれ以上になり、過去最高とみている。現在のところ、国内東部ではかなりの降雨があり、西部でもトウモロコシの生育に必要な最低限の降雨はある。1月ごろの干ばつ発生の可能性は少ないと見込んでいる。
国内需要量については、自家用飼料としての使用量にもよるが、最近の傾向として、肉牛や酪農向けにソルガムや大麦などの代替需要が増えていることから、500〜600万トンとみている。
このような状況の中、今年度の政府によるトウモロコシの輸出許可数量は、前年度産の在庫分を含めて現在750万トンであるが、今後倍以上の1500万〜2100万トンに達する可能性があるとしている。
一方、CIARAは、生産量は過去最高となるものの、干ばつの影響などを考慮しMAIZAR よりも少ない2500万トン、需要量はソルガムなどの代替需要はあまり増加しないと見ていることから前年度と同様の800万トン、輸出許可数量は生産量・需要量を勘案した結果、1700万トンとみている。
2 今後の価格動向について
MAIZAR は、輸出拡大が行われれば、今後のトウモロコシ国際価格(シカゴ相場:12/1現在で1ブッシェル当たり601セント(約46円、1ドル≒78円))は、低下すると見ており、今後のさらなる低下を見越して、先売りが進んでいるとしている。
しかし、CIARAは、米国のエタノール需要や在庫率の低さ(11月現在で6.7%)を考慮すると、引き続き堅調に推移するとみている。
3 中国向け輸出の動向について
現在、アルゼンチン・中国両政府は、残留農薬などの衛生条件や遺伝子組み換え(GM)トウモロコシの取扱いなどに関する輸入条件の最終的な協議を行っている。これについて、MAIZAR・CIARA両団体とも、中国政府がトウモロコシ自給体制の維持に努めていることや、米国からのトウモロコシ輸入が多いことなどを考慮すると、輸出が開始されても大幅に増加することはないとみている。
米国は過去最高の2900万トンと予測
米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOR)が11月9日に公表した世界農産物需給推計の月次報告によると、アルゼンチンの2011/12年度(3月〜翌年2月)産のトウモロコシ生産量は、前年度比28.9%増の2900万トンと大幅に増加し、過去最高が見込まれている。USDA/WAORの予測は、MAIZAR・CIARAの見通しよりも多いまたはほぼ同じであるが、今後のアルゼンチンのトウモロコシ生産は、パンパ地域を中心に適度な降雨があるかにかかっていると言えよう。同国のトウモロコシの生産動向は、世界のトウモロコシ需給に影響を及ぼすだけに、今後の動向に注目したい。
【石井 清栄 平成23年12月6日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4394