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長期化する牛肉価格高騰(アルゼンチン)

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と畜頭数低迷に伴い価格高騰

 アルゼンチン農牧漁業省(MINAGRI)によると、2011年1〜9月のアルゼンチンにおける牛のと畜頭数は、2009年の繁殖雌牛の淘汰などの影響により、ひと月当たり100万頭未満と、過去に例を見ない低水準で推移している(図1)。アルゼンチンでは、と畜頭数の著しい減少に伴って国内で供給不足を招き、生体牛価格の上昇が続いている。と畜頭数は、4月に過去最低頭数の81万9900頭、生体牛価格は、8月に過去最高値であるキログラム当たり8.58ペソ(約154円、1ペソ≒18円)を記録した。
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と畜頭数低迷が輸出に与えるインパクト

 2011年1〜9月の牛肉輸出量は、前年同期比20.0%減の12万4千トンと大幅に減少し、2009年同期比59.9%減となった。2011年1〜9月の牛肉生産量は、前年同期比7.1%減の185万5千トン、2009年同期比26.6%減となった。輸出量の大幅な減少は、と畜頭数減少により国内への供給確保を優先したため、輸出が抑制されたものと考えられる。
 なお、2011年1〜9月の牛肉輸出価格(月ごとの平均価格)は、2009年同期比97.6%高の1キログラム当たり7.82USドル(約610.0円)と大幅に上昇した。
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フィードロットは肥育期間を長期化し、収益性を確保

 アルゼンチンでは、牛のと畜頭数の半数がフィードロット飼養である。生体牛価格の高騰によるフィードロット経営の影響について、アルゼンチンフィードロット協会のロドリゴ専務からの聞き取りによると、素牛購入価格の高騰の影響により、収益性を確保するためには、以前よりも肥育期間を延ばす必要があるとした。
 ロドリゴ専務によると、2009年は、素牛購入価格が体重1キログラム当たり3ペソ(約54円、1ペソ≒18円)、肥育コストが同4.5ペソ(約81円)、出荷価格が同3.4ペソ(約61.2円)であった。体重あたりの肥育コストが出荷価格を上回っていたため、できる限り短期間で肥育し出荷していたという。
 2010年は、素牛価格が大幅に上昇し体重1キログラム当たり13ペソ(約234円)と、出荷価格同9.5ペソ(約171円)を大幅に上回った。肥育コストは同6.5ペソ(約117円)と、出荷価格を下回った。このため、生産者は素牛購入を控え、牛の増体重を図ることで収益性を確保することになり、その結果、肥育期間(フィードロット収容期間)の長期化につながった。現在の理想的な肥育モデルは、160キログラムの素牛を購入し、120日間かけて330から340キログラムまで肥育し、販売することであるという。
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 しかしながら、アルゼンチンの主要品種はアンガス種で、体重が一定以上になると脂肪のみが増え、逆に出荷価格を下げてしまうという問題がある。このため、今後は品種改良や、長期肥育に向いた飼料設計の開発が望まれているとした。

と畜頭数は2013年より徐々に回復か

 所得補償を目的とした補てん金の不正支給問題に端を発し、政府は2010年にフィードロット向け補てん金を廃止した。小規模フィードロットの中には、不安定さを避け、経営を中断したところもあるが、現在経営を続けているフィードロットも、素牛購入価格高騰と補てん金廃止の影響により、経営は決して良好ではなく、素牛購入価格が下落するまで、生産コストを切り詰めるなどの努力をしているという。
 単純に2009年と2010年の素牛購入価格(上記表参照)を比較した場合、2010年以降は、初期投資に2009年の4倍以上かかる計算となることから、フィードロット経営への新規参入がしづらく、かつ既存のフィードロットも飼養頭数を増やすことが難しい状況にあるとした。今後2年間は素牛購入価格の大幅下落は見込めないことから、フィードロット産業における技術的課題を含め、経営安定のための新たな取り組みを検討しているという。
 現在、と畜頭数が2009年より前の水準に回復するには、3年以上が必要との見方が一般的である。生体牛価格高騰の影響により、生産者の子牛の保留が行われていることから、2013年以降と畜頭数が徐々に上昇するという予測もあり、この見方によれば、価格も下落傾向に向かうと思われる。


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【柴ア 由佳 平成23年12月8日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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