2011/12年度の冬作物生産量は史上最高が見込まれるも、品質低下が報告される(豪州)
2011/12年度の冬作物生産量は史上最高に上方修正
豪州農業資源経済科学局(ABARES)は12月6日、2011/12年度(7月〜翌6月)における冬作物および夏作物の生産見通しを発表した。これによると、冬作物は作付面積2254万1千ヘクタール(前年度比0.2%減)、生産量4342万6千トン(同2.2%増)と予測される。生産地域の大半で春先の降雨に恵まれ、生産量が前回予測(9月時点;4102万1千トン)から240万5千トン上方修正された結果、史上最高の豊作が見込まれる。品目別では、小麦が2828万6千トン(前年度比1.4%増)、大麦が849万1千トン(同4.2%増)、カノーラが249万5千トン(同4.7%増)と、主要3品目いずれも前年度を上回る見込みである。
しかし、多雨による収穫作業の遅れや小麦および大麦の品質低下についても、同時に報告されている。
WA州で大幅に増産‐小麦生産量は1000万トン超‐
冬作物生産量の増加は、最大の農作物生産地である西オーストラリア(WA)州の増産によるところが大きい。同州においては、冬期の雨に恵まれたことに加え、9〜11月にかけても生産地の大半で平均以上の降雨があった。その結果、生産量は前回予測から148万2千トン上方修正されて、1467万4千トンと見込まれる。これは、干ばつとなった前年度を81.7%、過去5年平均を36.2%上回る高水準である。品目別では、小麦の生産量が1010万トン(同102.0%増)と、2003/04年度以来の1000万トン台が見込まれることとなった。
しかしながら、WA州では生産量は増加しているものの、多雨によって小麦や大麦の品質が低下し、飼料用向け割合が増加している。12月1週目現在の収穫作業の進捗率は5割にとどまる中、豪州気象局は同州で12月から2月にかけても平均を上回る降雨を予報しており、実際に12月上旬には1日で100ミリ以上を記録する雷雨もあった。このことから、今後も飼料用向けの増加が予想される。
東部などでは前年度から軒並み減少
東部州では、ニューサウスウェールズ(NSW)州は前回予測から61万5千トン上方修正されて1188万9千トン(同21.7%減)、ビクトリア(VIC)州は32万1千トン上方修正の675万9千トン(同13.0%減)、クイーンズランド(QLD)州は24万トン上方修正の211万6千トン(同11.7%増)となった。これは、生産地の大半で冬期の降雨量が平均を下回っていたものの、VIC州、NSW州南部では、10月や11月に平均を上回る降雨があったこと、また、NSW州北部からQLD州南部にかけての作物生産地域でも、11月に平均を上回る降雨があったことから、前回予測よりも単収が増加したことによる。
一方、南オーストラリア(SA)州は25万5千トン下方修正されて、791万6千トン(同16.6%減)となった。SA州でも10月に降雨があったものの、単収増には結び付かなかった。
QLD州を除いて前年度から減産が見込まれるものの、いずれの州でも過去5年平均から3〜4割増の高水準である。しかし、WA州と同様に、NSW州やQLD州、SA州でも多雨による品質低下が報告されている。
夏作物の作付面積はコメおよび綿実で増加、生産量はソルガムを含め増加
夏作物の作付面積は、前年度並みの152万7千ヘクタール(同1.0%増)と見込まれる。生産量は、主要3品目でいずれも増加し、前年度から17.6%増の538万9千トンと見込まれる。
品目別でみると、ソルガムの作付面積は66万7千ヘクタール(同1.0%減)と前年度並みが見込まれる。生産量は、主産地であるQLD州南部からNSW州北部にかけて11月後半に降雨があり、土壌水分量の増加が報告されていることから単収増が見込まれ、241万5千トン(同16.8%増)と予測される。
コメの作付面積はかんがい用水の使用量の増加が見込まれて、10万1千ヘクタールと前年度から34.7%の大幅増が見込まれる。作付け増を反映し、生産量も91万5千ヘクタールと前年度から26.1%の大幅増が見込まれる。
綿実については、作付面積は60万2千ヘクタール(同2.0%増)と前年度からわずかな増加にとどまるものの、かんがい用水を使用する地域で作付け割合の増加が見込まれる。生産量については、QLD州では前年度の洪水被害による単収低下から回復が見込まれること、かんがい用水を使用する地域では単収向上が期待できることから、161万7千トンと前年度から27.4%の大幅増が見込まれる。
【伊藤 久美 平成23年12月9日発】
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