欧州委、新たなアニマルウェルフェアに関する戦略を採択
欧州委員会は1月19日、アニマルウェルフェアに関して政策の改善、質の向上を目的とした2012年から2015年までの4年間のアニマルウェルフェアに関する新戦略を採択し、公表した。
これまでの取り組み
EUレベルでのアニマルウェルフェアに関する法規制は1974年のと畜時の家畜の取扱いに関する規則から始まっており、その後、対象家畜など規制の範囲が広がるなど規則が整備された。アニマルウェルフェアは、「飢え・渇き・不快・痛み・けが・病気、通常行動の制限、不安・ストレス」からの解放といった「5つの自由」を原則に基づいて規定されている。また、畜種(牛、豚、採卵鶏)ごとに、その飼養管理に係る最低水準の条件などが規定されている。
現在、2006年1月に欧州委員会より公表された、以下の5分野から構成される2006年〜2010年の5年間のアニマルウェルフェアの行動計画に基づき取り組んでいる。
(1) アニマルウェルフェアの最低基準の引き上げ
(2) アニマルウェルフェアの研究および動物試験における「3つのR(replacement(代用)reduction(減少)refinement(改良))」の原則の促進
(3) アニマルウェルフェアに関する表示の規格化の導入
(4) 家畜飼養者や一般市民へのアニマルウェルフェアに関する情報の共有および提供の促進
(5) EUのアニマルウェルフェアにおける国際的な主動的な立場を保持
また、共通農業政策(CAP)における直接支払いの受給のための共通順守事項(クロス・コンプライアンス)に、アニマルウェルフェアに関する規則の条件も追加されている。
既存の行動計画の強化により、取り組みの拡充を図る
アニマルウェルフェアの取り組みについては、加盟国によって規則の執行が徹底されていないこと、消費者や関係者に対しアニマルウェルフェアに関する適切な情報の提供が徹底されていないことなどの課題があり、アニマルウェルフェアの原則の理解をわかりやすくする必要があるとの指摘がされている。欧州委員会では、今回、これらの課題に向けた改善を目的とした新たな戦略を作成した。
新たな戦略の方法として、包括的なアニマルウェルフェアに関する法律の提案や、既存の行動計画の強化などのアプローチが示されている。このうち行動計画の強化については、
・加盟国の支援やアニマルウェルフェアに関する規則に対するコンプライアンスの改善のための措置
・国際的な協力
・一般市民に対する適切な情報の提供
・CAPとの相乗効果を最大限に活用
・養殖魚の福祉に関する調査
を挙げている。
主な行動スケジュールは以下のとおり。
【小林 奈穂美 平成24年1月26日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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