畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2012年 > トルコ向けがけん引し、2011年も牛肉純輸出地域となる(EU)

トルコ向けがけん引し、2011年も牛肉純輸出地域となる(EU)

印刷ページ
 欧州委員会によると、2011年のEUの牛肉輸出量(生体牛含む)は、前年比30.9%増の63万5千トンと、2年連続で大幅に増加した。輸入量は、同14.8%減の32万3千トンとなった。前年に続き輸出量が輸入量を上回り、EUは牛肉の純輸出地域となった。
1

トルコ向け輸出がけん引

 輸出量の大幅な増加の背景には、牛肉の国際市場の高騰やユーロ安およびロシア向けが堅調に推移したことと、トルコ向けの輸出が大幅に伸びたことが挙げられる。
表
 トルコ政府は、国内の旺盛な牛肉需要を受けて2010年10月から牛肉輸入関税を225%から30%に引き下げた。2009年以前までほとんど実績のなかったEU産牛肉のトルコ向け輸出が、2010年第4四半期以降、冷蔵品を中心に大幅に増加した。2011年に入っても大幅に増加して、16万7千トン(前年比136.9%増)となり、これまで最大の輸出先であったロシアを抜くこととなった。また、スイス、ボスニア・ヘルツェゴビナ向けの輸出も大きく伸びており、EU産牛肉の輸出の大幅な増加の一因となった。
2

ロシア向けは前年比2%増

 主要輸出国であるロシア向けは、前年比2.1%増の13万8千トンとわずかな増加となった。前年同様、ブラジル、ウルグアイ、アルゼンチンなどの南米の輸出量の減少が影響して、国際的に牛肉供給がひっ迫していたことや、EU産牛肉が、ルーブル高により国際市場において相対的に競争力が強まったことから、EUからの輸入は堅調であった。
 しかし、2012年に入り、ドイツ、オランダなどで発生した家畜の新たな疾病、シュマレンベルクウィルスの発生を契機に、ロシア政府はEUからの牛肉および生体牛の輸入を禁止しており、最近、禁止の延長を表明していることから、これが長期化すれば、同国向けの牛肉輸出が落ち込むことが懸念される。
3

2012年の輸出量は減少の見込み

 2011年の輸出は好調だったものの、EU産牛肉の価格は2011年以降、上昇傾向にあり(図4)、2012年に入ってもこの傾向は続いている。欧州委員会の短期予測では、2012年の輸出量は、ロシアやトルコ向けは楽観的な見通しとなっているものの、価格の上昇や域内需要の落ち込みによる供給量の減少から、前年を下回る見込みとなっている。
4
【小林 奈穂美 平成24年3月29日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9531