欧州委員会の農業・農村開発総局の農業議会(4月26日、27日開催)において、ポーランド政府はEUにおける牛乳・乳製品価格の安定化のための輸出補助金の再導入と介入買取価格の引き上げを求めた。
ポーランドの要求の背景には、最近のポーランドにおける牛乳・乳製品価格の落ち込みとバター及び脱脂粉乳の介入在庫の増加がある。
EUの酪農業界は、2011年は非常に好調であり生乳価格も高水準で推移したが、2012年に入り価格が下落し始め下げ止まっていない。介入買取在庫については、ポーランドのみならずEU各国も増加しており、牛乳・乳製品市場での価格安定に対して懸念を示すのはポーランドのみではない。
ポーランドは「昨年の牛乳・乳製品価格の好調から一転、今年初めより価格は下落し、現在ポーランドでは昨年と比べて20〜30%の落ち込みを見せている。また、国内及び域内市場は成熟市場であり今後の大きな伸びは期待できない。」とした。このような状況の中、本年度の介入買入が開始した3月以降およそ粉乳20,000トン、バター10,000トン、チーズ5,000トン、ホエイ3,000トンの在庫が積み上がっているとも述べている。この在庫量について、当該期間において平均を上回る水準とし、現在の状況が極めて厳しいことを強調した。
EUは共通農業政策(CAP: Common Agricultural Policy)の見直しを検討しているが、現行案ではバター介入買入在庫量の上限を30,000トンとしている。これに対し「介入買入による安定化を図るためには、不十分な数量」と指摘し、上限の設定について見直しを求めている。さらに、「現在のEUにおける牛乳・乳製品の市場の安定化を図るため2009年11月より輸出補助金を0ユーロと設定しているが、今すぐに再導入すべき」としている。
この主張に対し4月30日、ダチアン・チオロシュ農業・農村開発担当委員は、「欧州委員会は、市場の状況を監視することを約束するが、現在の市場状況は危機とまでは言えない。EUのバター及び脱脂粉乳は、2012年1月から3月までの期間で対前年比3%増であり、引き続き輸出が増加していることから輸出補助金再導入の要件を満たしていない。介入買入価格の引き上げは、生産者の誤認を招く。」と自重を求めた。
今回、輸出補助金の再導入には至らなかったが、現在EUでは牛乳・乳製品価格が下落しており、今後の動向は注視していく必要がある。