2012年7月1日より炭素価格制度開始(豪州)
豪州では今月1日、炭素価格制度(炭素税)が開始された。これにより、初年度である2012/13年度(7月〜翌6月)は、電力会社、天然ガス供給会社や鉱業関連企業のほか、二酸化炭素排出量2万5000トン以上の施設を稼働する企業など290数社が、排出量1トン当たりにつき23豪ドル(1,900円:1豪ドル=84円)の支払いを求められる。また、光熱費やガス料金などが値上げされることから、炭素税の支払い対象となっていない企業や生産者、消費者などにも影響が及ぶことは必至である。
食肉加工大手4社が炭素税の支払い対象に
牛肉産業において炭素税の支払い対象となる企業には、食肉加工大手のJBS AustraliaやTeys Australia(Beenleigh食肉処理施設)、Kilcoy Pastoral Co.、 Bindaree Beef(Yolarno Pty Ltd)、レンダリング業者のA. J. Bush & Sonsが含まれている。
Teys Australia Beenleigh食肉処理施設での炭素税の年間支払額は、最低でも60万豪ドル(5040万円)となっている。同社では炭素税の支払いを回避するために、一時的な工場閉鎖を検討しているようである。
一方、豪州最大の食肉加工処理施設であるJBS Australia Dinmore食肉処理施設では炭素の年間排出量は8万トンと見積もられており、支払いは避けられない状況のようだ。同社の年間支払額は180万豪ドル(1億5千万円)にのぼるとみられている。
これらの工場での1頭のと畜に係る追加コストは6〜8豪ドルと見積もられている。しかしながら、米国や南米などほかの牛肉輸出国と競合する海外市場においては、輸出業者が生産コストの増加分を牛肉価格に転嫁することは難しい状況と思われる。
炭素税が今後、肉牛および牛肉価格、牛肉生産にどのような影響を及ぼすか、注目されるところである。
【伊藤 久美 平成24年7月5日発】
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