欧州委員会が短期予測を発表(EU)
欧州委員会は、2013年までの食肉及び乳製品市場の短期予測を発表した。
概況
EUの畜産の飼養頭数は、2011年と比べて2012年は0.4%減、2013年は1.0%減となる見込みである。また、国内需要ひっ迫による価格高に対してEUにおける経済不安が消費を減少させる。消費減退およびユーロ安が食肉の輸入量を減少させ、2012年は前年比1.0%減となる。一方、国際市場における需要高は輸出を促進させ2012年は同3.6%増の見込み。
EUの生乳生産量は、2012年は前年比1.5%増、2013年は0.7%増の見込みである。2011年の乳製品の高騰により2012年第1四半期では生産増による下落がEUおよび国際市場でみられた。現在の見通しでは、消費の微増と輸出の促進が見込まれているが、消費量の動向は、消費者価格と可処分所得に依存しており、予測の根拠が不確定である。
牛肉
牛の飼養頭数は、2008年以降年平均1.1%減で推移しており、今後もこの傾向は継続するものとみられる。2012年の牛肉生産量は、前年比3.5%減となる見込みである。供給が不足すると見込まれていることから2012年も牛肉価格は高水準で推移するものとみられる。国内需要の減少とユーロ安の影響で、2012年の輸入量は前年比5.8%減の見込みである。輸出は、生産能力の低下により大きく減少するものとみられる。結果的に、2011年は純輸出国であったEUは、2012年、2013年は純輸入国に転じる見込みである。
豚肉
2012年の豚の飼養頭数は前年比1.7%減となるものの、豚肉生産量は前年の水準を維持するとみられる。しかしながら、2013年はアニマルウェルフェアに係る母豚のストール飼育禁止が施行されることから、生産量は同2%減少する見込みである。
貿易は、ユーロ安と国際需要ひっ迫、特に中国による需要増がEUの輸出を大きく伸ばし、2012年は同3.5%増となる見込みである。しかし、2013年は、生産量の減少により輸出量は同10%減となるものと見込まれる。輸入は、域内での消費の伸び悩みなどもあり輸入業者への利幅増が見込めず2012年、2013年とも1万3000トン〜1万4000トンに留まる見込みである。
牛乳・乳製品
生乳生産量は、2012年は前年比1.5%増の1億5400万トン、2013年も同0.7%増となる見込みである。泌乳量は、2012年も増加傾向にあり、1頭当たりの年間泌乳量は6,598kgとなることが見込まれており、泌乳量増加が飼養頭数の減少(年1%減)を補うものとみられる。
2011年の生乳価格高騰により、生乳生産は増加し、2011/12年度(4月〜3月)における生乳クオータ超過国は、キプロス、ドイツ、アイルランド、オーストリア、オランダおよびルクセンブルグとなる予測。
生乳生産量の増加により、2012年のチーズ生産量は前年比1.1%増、2013年は同0.6%増の見込みである。生産されたチーズはほぼ域内で消費されるが、域外での需要も高まっており輸出は増加するものとみられる。
2012年の全粉乳生産量は前年比1.1%減となる。EU産の全粉乳は国際市場における価格競争力が弱く輸出が伸びないこと、また、EUではチーズ生産が主であることが主な減少要因である。一方で、脱脂粉乳生産量は、同14.5%増と大幅に増加し、2013年も6.5%増となるものとみられる。輸出は、全粉乳が減少する一方で、脱脂粉乳は増加するとみこまれ、2012年は前年比12%増、2013年は同7.0%増と今後2年間で大きく増加するものとみられる。
バターおよびバターオイル生産量は、2011年と同様に2012年も前年比3.8%増、2013年も同0.8%増となる。EUのバターおよびバターオイルは、国際価格より高いため競争力に欠けるが、2013年には若干の回復が見込まれる。
【矢野 麻未子 平成24年7月18日発】
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