豪州、2012年の牛肉供給を下方修正
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は7月19日、今年1月公表された肉牛需給予測の期中改定版を公表した。今回の報告では、国内外の市場で牛肉消費の低迷が長引いていること、日本や韓国など主要市場での豪州産牛肉の競争力が低下していることなど、需要の落ち込みが懸念されることから、と畜頭数や生産量、輸出量など供給面で概ね下方修正された。
と畜頭数は前年比1.9%増、生産量は同2.5%増
2012年6月末時点における飼養頭数は2960万頭(前年比3.8%増)となり、1月予測(3000万頭)から下方修正された。しかし、雌牛のと畜頭割合をみると、2011年は1996年以来最低の43%、2012年1〜5月は44.5%となっており(2001年から2010年の平均は47.4%)、全体として雌牛を保留し牛群再構築を行う動きに変わりはないものとしている。
2012年のと畜頭数(成牛)は740万頭(同1.9%増)と、1月予測(755万頭)から下方修正された。その理由として、今年前半にクイーンズランド(QLD)州やニューサウスウェールズ州を襲った大雨、5月と6月の食肉処理加工場の一時閉鎖などを挙げる。この結果、2012年1〜5月までのと畜頭数は前年同期比0.6%減となった。しかしながら、2012年後半には、(1)牛群再構築が開始されてから飼育された肉牛が出荷時期を迎えること、(2)今年後半の気候は乾燥が予測されていること、(3)北部のQLD州で夏に向け出荷増が予測されること、(4)牛群再構築は緩やかに転じ、未経産牛、経産牛ともに出荷増が予測されること―などから、と畜頭数の増加が見込まれ、2012年通年では前年からわずかに増加する予測となっている。
同生産量(成牛、枝肉重量ベース)は213万9千トン(同2.5%増)と予測される。良好な飼養条件を反映して、平均枝肉重量は前年から1頭当たり1.7kg増が見込まれることを反映し、生産量はと畜頭数よりも大きく増加するものとみられる。
輸出量は日本向けと韓国向けが下方修正の一方、米国向けが上方修正
2012年の牛肉輸出量(船積重量ベース)は96万トン(前年比1.1%増)と、1月予測(97万5千トン)から下方修正された。最も大きな要因は、日本、韓国向けの下方修正である。両市場では、米国産牛肉の輸入増や国内生産の増加が影響して、日本向けは1月予測から5千トン減の32万5千トン(前年比5.0%減)、韓国向けは同2万トン減の10万5千トン(同28.2%減)と予測される。一方、米国向けは25万トン(同49.0%増)と予測され、1月予測から3万5千トン上方修正された。国内生産の減少から、豪州産加工用牛肉の引き合いが強まっていることによる。米国向け加工用牛肉価格の高止まりから、他国(日本、韓国、ロシアおよびインドネシアなど)向けの減少にもつながっている。
2012年の生体輸出頭数は、1月予測と同じ57万頭(同18.0%減)と予測された。減少の要因は、最大の輸出先であるインドネシア向けの減少によるものである。インドネシア政府は同国の牛肉自給率向上を目標に、2012年の生体牛輸入割当頭数を前年の52万頭から28万3千頭にほぼ半減させ、7月時点も同様の予測となった。
シカゴ相場高騰が豪州牛肉価格に及ぼす影響
2011/12年度米国産トウモロコシの生産が高温乾燥により悪化との見通しからシカゴ相場が急騰しているが、これに連動して、豪州国内の穀物価格も上昇している。豪州のフィードロット産業は、国内で生産された小麦や大麦、ソルガムなどを飼料として使用しているため、生産コスト増による影響を受けそうだ。現在のところ、豪州産牛肉価格の上昇は見られていないが、今後、日本向けフィードロット牛の輸出価格にも影響を及ぼすかもしれない。
【伊藤 久美 平成24年8月2日発】
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