2012/13年度農業プランがスタート(ブラジル)
昨年度をさらに上回る予算規模
ブラジル農務省(MAPA)は7月1日、2012/13年度の穀物生産量1億7千万トンを目標に環境を保全しつつ、食糧供給の安定的確保や地域生産者の生産能力・競争力強化などを目的とした2012/13年度の農業プランを開始した。
今年度は営農・販売、投資などへの融資として1,152億ドル(約4兆3,776億円:1レアル=38円)と、過去最大規模となった前年度よりさらに7.5%上回る予算が措置された。
また、融資資金量の増加に加え、営農・販売、投資に対する融資利息を年利6.75%から5.5%に引き下げ、農業生産者への支援を強化している。 融資資金量は2002/03年度からの10年間で205億レアル(約7,790億円)から1,152億レアルと5倍以上に増加した。
営農・販売融資では特例として養豚生産者向けの融資を実施
営農・販売融資については、前年度比8.4%増の869億5千万レアル(約3兆3,041億円)が充てられ、このうち705億5千万レアル(約2兆6,809億円)は政府が利息を管理する資金として年利5.5%、残りの164億レアル(約6,232億円)が市中金利で融資される。 営農融資は農畜産物の生産や加工に係る経費を対象としており、今年度の融資限度額は1農家当たり前年度の65万レアル(約2,470万円)から80万レアル(約3,040万円)に、また、連邦政府が定める農畜産物の最低価格を基礎として農畜産物を担保に行われる販売融資に係る融資限度額は130万レアル(約4,940万円)から160万レアル(約6,080万円)にそれぞれ引き上げられた。
今年度は特別に養豚部門における生産コストの上昇や主要輸入先における障壁等の問題を考慮し、養豚生産者に対し、繁殖用雌豚保留のために1農家当たり120万レアル(4,560万円)、償還期間2年間とした融資枠が創設された。さらに昨年度から開始された肉牛生産者に対する繁殖雌牛の購入に係る融資も継続し、利息を前年度より引き下げ、年利5.5%とした。
また、生産者の所得保障と次期作付けの算定基礎となる農畜産物の最低保証価格は、市場価格が比較的安定している一部の作物(綿、米、落花生、フェイジョン、南東、南部およびマットグロッソを除く中西部のトウモロコシ及び大豆)については、おおむね昨年度と同額となっている。なお、南部地方及びマットグロッソドスル州では家畜用飼料の確保を目的に乾燥に強いソルガムの生産を奨励するため最低価格の引き上げを行った。
投資融資は中規模農業者向けに支援を強化
一方、投資融資は前年度比4.8%増の283億レアル(約1兆754億円)の予算が措置された。 このうち温室効果ガスの削減を図り、持続的農業を拡大する低炭素排出型農業プログラム(ABC)と中規模農業者支援国家プログラム(PRONAMP)が重要課題として継続される。中でも中規模農業者に対しては、PRONAMPを強化することでその支援の度合いを高め、前年度比90%増の予算を措置した。さらにこのプログラムを利用できる生産者の資格として定められている年間売上高を昨年度の70万レアル(約2,660万円)から80万レアル(約3,040万円)に引き上げ、より多くの生産者がこのプログラムを利用できるよう配慮している。
業界の反応はおおむね好意的
今回公表された2012/13年度の農業プランに対し、関係団体は発表された融資額が農業部門の要求を下回るものの十分の量として受け止めており、プランを支持する声が多くを占めている。一方で、融資量の増加や利息の引き下げ以上に重要なことは、生産者の資産を保護する政策モデルであるという意見や、生産者が債務を負うため、融資の利用が阻まれているという現状を訴える声、さらに農業開発と環境規制との間に生じる問題の解決を求める声もある。
【横打 友恵 平成24年8月17日発】
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