ラクトパミン規制緩和へ踏み出す〜中国の動向の指標に(台湾)
台湾は、米国産牛肉の貿易問題や、コーデックス(Codex)の採択を踏まえ、ラクトパミンの規制を緩和した。
台湾行政衛生署は7月、コーデックスが採択した牛肉のラクトパミン最大残留基準(MRL,0.01ppm)を採用しても、人の健康に危害を及ぼすリスクはないとし、MRLを牛の筋肉中のみ設定した。豚肉については消費量が多いことなどを理由にリスクが高いと判断し、MRLの設定は見送った。
MRL、牛肉のみ設定
行政衛生署は8月、食品衛生管理法(第11条)を改正し、MRLが設定されるラクトパミンを含む類似物質(βアゴニスト)は、MRLの範囲内の食品中への残留を認めた。βアゴニストのうち、MRLが設定されるのは牛肉のラクトパミンのみで、牛の内臓、豚肉、豚の内臓等は、従来どおり、ラクトパミンの残留は認めていない。
原産地表示、適用拡大
原産地表示強化にも踏み込んだ(食品衛生管理法第17条の1改正)。牛肉を原料としたすべての食品を対象に原産地表示を義務付け、包装食品、ばら売り販売所、レストランなどの外食などでも原産地表示が義務付けられた。原産地表示の適用拡大を図った。
ラクトパミンの使用認めるも
行政農業委員会は、動物用医薬品管理法に基づく公告を改正し、飼料に添加する牛用βアゴニスト製剤の使用を認めた。ただし、行政農業委員会は、あくまでもMRLが設定されている製剤に限られるもので、ラクトパミン以外のものを承認することはないとしている。
台湾は牛の年間と畜頭数が3万頭と少なく、生産量は年間6千トンと、豚肉の140分の1にも満たないため、医薬品メーカーが多大な費用を投じてラクトパミンの承認に向けて動き出すとは考えにくい。当面、台湾国内で、ラクトパミンの使用はないものとみられる。
台湾はコーデックスで採択された残留基準を受け入れつつも、国内消費の少ない牛肉のみに限るなど国内への影響を最小限に留める対応を講じた。今回の対応は、ラクトパミンの使用を認めていない中国の動向を見据える指標となろう。
【新川 俊一 平成24年9月18日発】
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