11月7日から9日まで米国インディアナ州インディアナポリス市で開催された米国食肉輸出連合(USMEF)の戦略的計画会議において講演したインディアナ州パデュー大学のハート教授は、近年の米国産トウモロコシの高値の要因の一つに中国による米国産大豆の輸入量の急増があるとの見方を示した。
米国のバイオエタノール政策が米国産トウモロコシの固定的な需要を産み出し、この需要によって相対的に他の需要向けトウモロコシの供給可能数量が圧縮されるか、期末在庫が減少することにより、2006年まで長期にわたりブッシェル当り2ドル〜3ドルの幅で推移してきたトウモロコシ価格が、2007年以降、上昇局面に転じたというのがこれまでの見方だった。しかし、中国の米国産大豆の輸入量は2006/07作物年度(9月/8月)以降急速に増加しており、輸出量を面積に換算した作付面積もエタノール用トウモロコシの作付面積の推移とほぼ同様の推移を示している{ただし、エタノール用トウモロコシの作付面積は、醸造副産物として飼料に利用される醸造粕(DDGS)に相当する面積(醸造に使用したトウモロコシの1/3)を除外したもの}。
米国では、大豆とトウモロコシは同じ農家が生産しているため、中国の大豆の輸入需要が旺盛なことによりトウモロコシの作付面積拡大の可能性が極めて限定的となり、結果として、市場にトウモロコシ供給量拡大の可能性が見えないためにトウモロコシの高値が続くことになる。
2012/13年度は、干ばつにより米国産大豆も高値となっているため、中国の大豆の輸入先が一部南米にシフトしている。しかし、2012/13年度の米国産大豆の輸入見込み数量はほぼ前年度並となっており、現在作付されているブラジルの第1期作大豆が大豊作で値崩れを起こすなどの事態が起こらない限り、中国の米国産大豆の輸入が大幅に減るとは考えにくく、トウモロコシの価格水準もブッシェル当り5ドル以上の高値安定が続くものとみられる。