EU、農産物及び食品の品質にかかる新たな規則が施行
EUの食品の地理的表示にかかる規則を含めた品質に係る新たなフレームワークが2013年1月4日より施行された。新たな規則は、これまでのEU規則No509/2006(TSG)と同No510/2006(PDO,PGI)が「EU規則No115/2012 農産物及び食品の品質スキーム」として2012年11月21日に改正されたものである。
本規則の施行にあたり、欧州委員会チュロス農業担当委員は、「EUの農産物の強みは、多様性、生産者のノウハウそして生産の地域と土壌にある。その一方で、生産者は景気の低迷、小売業者の交渉力、世界規模の競争にさらされており、生産物の品質が高いことについて消費者の理解を深めることが必要である。」と述べた。
主な改正のポイントは、(1)EUにおける品質スキームに対してより一貫性と明確性を示し、(2)既存のPDO(保護原産地呼称)及びPGI(保護地理的表示)スキームの強化、(3)TSG(伝統的特産品保護)の見直し、(4)消費者に対して更に情報を提供する任意の品質用語「山の産品(mountain products)」等の新たな枠組みを敷設である。また、欧州委員会は、本規則施行後1年以内に施行による影響評価について報告を作成し、欧州理事会及び議会に説明することとなっている。
主な改正の内容は、以下のとおりである。
(1) PDO(保護原産地呼称)及びPGI(保護地理的表示) ※
登録など手続きの迅速化、運営管理の明確化、ロゴ使用の義務化、法的根拠をもつ自由貿易協定を通じてのGI(地理的表示)保護などである。
また、PDO(保護原産地呼称)及びPGI(保護地理的表示)の定義をWTOのTRIPS(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)により適合するように変更し、産品が単に地域別ではなく、確立された品質により識別されることを重視している。
※ 詳細は、「
EUの農産物の原産地呼称保護制度などについて」を参照のこと
(2) TSG(伝統的特産品保護)
TSG(伝統的特産品保護)は、簡略化及び強化されるとともに、今後は名称のみを事前予約して登録することが可能となる。また、「伝統的」であることの証明として、これまで必要とされていた25年の販売実績が30年へ延長される。
(3) 任意的品質用語
品質制度を支える第2の方法として、任意的品質用語が設定される。これらの用語は、EU全体で共通に利用し付加価値を与える必要がある。
任意的品質用語として既に「マウンテンプロダクツ(mountain products)」は設定済みとなっている。欧州委員会は、委任行為により、新しい用語(および既存の使用条件の修正)を設定する権限を与えられている。
PDO及びPGIの登録数は1,056個
2012年上半期までのPDO及びPGIの登録数は、1,056個に及ぶ。カテゴリー別に内訳をみると、野菜、果実及び穀物が27.6%を占め、次いでチーズが18.8%、また食肉及び食肉製品は合計で23.5%となっている。国別にみると最も多く登録しているのはイタリアでフランス、スペイン、ポルトガルがこれに続いている。これらの国の農業の特徴として、小規模生産者が多く、生産者が自ら銘柄を作り農産物を販売しているため登録数が多くなっている。
EUは、多国間協定及び自由貿易協定(FTA)でPDO及びPGI等EU規則遵守を主張
EUは、農業分野における知的財産権の適切な保護の重要性について、WTO協定のTRIPS協定におけるGIs(地理的表示:Geographical Indications)について、より高度な保護が必要であると主張している。現在、EUはWTOの場でワイン及びスピリッツにのみ適用されているGIsを全ての農産物に適用すべきであると主張している。
また、自由貿易協定(FTA)においても、全ての農産物についてより高度な保護のため、交渉相手国に対してEUの規則を採用するよう求めている。例えば、昨年EU-韓国FTAが施行されたが、その際にも本規則の遵守が盛り込まれている。同様に現在、インド及びウクライナとの間でも同規則採用の交渉が行われている。
【矢野 麻未子 平成25年1月8日発】
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