3月11日、米国で新たな家畜トレーサビリティ始まる
米国農務省動植物検疫所(USDA/APHIS)はこの程、新たな家畜トレーサビリティ規則を制定し、同規則は1月9日付けで連邦官報(Federal Register)に掲載された。
同規則は、2010年2月に廃止された任意の全国家畜個体識別制度(NAIS)に代わる制度として、州境を越える家畜に限定して個体識別を義務付ける内容となっている。原案は2011年8月に公表され、パブリックコメント(同年8〜12月)を経て今回の制定となった。なお、同規則の適用は2013年3月11日からとされた。
家畜疾病のまん延防止を目的としたトレーサビリティ
規則は、家畜疾病のまん延防止を目的とするものであるため、トレーサビリティの範囲は生産からと畜までとなっている。規則の制定により、正確なトレーサビリティ情報が入手でき、また、仮に家畜疾病が発生したとしてもこれまでよりも短時間で調査ができることから、より迅速に疾病のまん延を防ぐことができるようになる。
パブリックコメントを踏まえ、原案を一部変更
「家畜の州間移動に関するトレーサビリティ(Traceability for Livestock Moving Interstate)」と名付けられた規則は、応募があったパブリックコメント1,618通を踏まえ、証明書となる書類の対象が拡大されるなど、原案よりも柔軟性が増したものになっている。(参照:原案からの主な変更事項)
牛、バイソン、羊、山羊、豚、馬、家禽、鹿が、州境を越えて移動する場合のみ規則の対象となり、すべての家畜には個体識別番号を付した個体識別(豚などグループ単位で移動する家畜はロット単位での識別番号)が義務付られる。
個体識別の手法は、NAISで用いられた耳標、従来からの連邦・州政府職員が発行する公的な耳標のほかに、出荷側および受取側双方の州政府や先住民の部族が合意すれば焼印や入れ墨等も認められる。
また、州境を越えて家畜が移動する際、連邦および州政府の獣医師もしくは行政機関に認められた獣医師が発行する州間獣医検査証明書((ICVI)家畜の個体識別番号、移動先、移動元、移動目的などの情報が含まれる)を添付する必要があるが、出荷側および受取側双方の州政府や先住民の部族が合意すればその他の書類も認められる。
なお、18カ月齢未満の肉牛にあっては、ショーや展示会などに用いられるものを除き公式な識別の対象からは除外されるが、除外される18カ月齢未満の肉牛については、将来、別途トレーサビリティ規則が制定される予定となっている。
米国のトレーサビリティは我が国のトレーサビリティとは異なり、食の安全が主目的に含まれないことから、限定的な内容になっている。しかしながら、全米規模のトレーサビリティを義務的に行うことは、今後、米国産畜産物の信頼性を高めることにもつながる一歩になると言える。
【前田 絵梨 平成25年1月11日発】
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