欧州委員会、短期予測を発表
欧州委員会は、EUにおける「作物、食肉および酪農市場の短期予測」を発表した。これによると、2012年秋の天候が良好だったため、穀物生産は良好で、2013/14年度における穀物市場は2012/13年度と比べて緩和する見込みである。2012/13年度の生産量は、前年度と比較して4.7%減の2億7200万トンとなり、EUの穀物市場はひっ迫して推移した。
2012/13年度の穀物生産の減少による飼料コストの上昇は、2013年の豚肉および牛肉生産を圧迫し、2013年の生産量は減少するものの、2014年は回復する見込みである。食肉生産において、飼料コストが生産に最も大きな影響を与えており、また、今後もこの傾向は継続する。また、2012年の生乳生産は、EU全体で前年比0.6%増の1億5210万トンとなった。2013年も生乳生産は増加傾向であるものの大幅な増加は見込めない。2013年1月から2月の乳製品価格は、堅調に推移している。
EUの経済概況
EUの人口は、年率0.3%で増加しており2014年には5億7百万人に達する見込みである。EUの経済は、2012年僅かな落ち込みを見せたが、2013年の経済成長は0.1%、2014年は1.6%を見込んでいる。ドイツ、英国では経済の回復が見込まれるものの、イタリア、スペイン、ギリシャは依然として低迷が継続する。また、失業率は、経済危機による影響で、EU全体で11%と高く、スペインおよびギリシャでは過去最高の27%まで達すると見込まれるものの、その後下がってくるだろう。
穀物
2012年の秋まき穀物の播種面積は、英国およびアイルランドを除いて増加したことにより、2013年の生産量は増加する見込みである。また、2012年の生産量は、前年比4.7%減の2億7230万トンとなった。減少の主な要因は、産地であるルーマニア、ハンガリーおよびブルガリアの干ばつによる影響でトウモロコシが前年比18.6%減の5540万トンとなったこと、普通小麦では、単収の減少により前年比4.2%減の1億2320万トンとなったことである。
飼料用穀物の消費は、アニマルウェルフェアによる養豚産業の再編による飼養頭数の減少と飼料コストの高騰により、飼料利用が減少したため、前年比2.4%減の1億6300万トンとなった。一方で、域外需要は強かったため、普通小麦の輸出量は同4.1%増の1490万トンに達した。
食肉
食肉部門は、経済の低迷、高い失業率、収入の減少に加えて飼料価格及び食肉価格の上昇が、市場に影響を与えた。この傾向は、2013年も強く影響するだろう。飼料コストの上昇は、牛肉生産および羊肉生産と比べて豚肉生産に影響を与え、豚肉の生産量の減少が見込まれる。豚肉生産の減少は、輸出量を8%減少させ、輸入量を0.9%増加させるだろう。2013年のEU全体の食肉消費量は、一人当たり年間81.9キログラムと従来の消費量に大きな変化はない。また、2014年以降の景気回復により食肉生産は回復する見込みである。
その他の動向として、豚肉の生産量は、アニマルウェルフェア規制の施行により2013年は前年と比べて2%減少の見込みである。なお、欧州委員会からの勧告により、全飼養頭数の80%にアニマルウェルフェア規制が適用され、今後も徹底が図られる予定である。
酪農
一部の加盟国では天候の影響で、生乳生産と収益が減少したものの2014年は回復の見込みである。2012年の生乳生産量は、前年比0.6%増の1億5210万トンとなった。生産が増加した加盟国は、ポーランド、ドイツ、デンマークおよびハンガリーであった。一方、アイルランド、英国およびフランスでは天候不良などの影響により減少した。2013年の生乳生産量は、前年比0.4%増、2014年は同0.5%増を予測している。
2012年の年間平均乳価は、2011年を下回った。これは主に、1月から5月までの価格低迷が響いたもので、下半期は堅調に推移した。EUは不景気であったものの2012年のチーズの需要は高く、生産量は前年比1.3%増となった。この傾向は、今後も継続するだろう。2012年の生鮮乳製品は、クリーム需要が増加したことにより、生産量が同0.7%増となった。今後も生鮮乳製品は微増の予測である。2012年の脱脂粉乳の生産量は大幅に増加して同7.2%となった。
2013年は、チーズおよび生鮮乳製品の需要が強いことから脱脂粉乳の増産には限界があると思われる。2012年のバターおよびバターオイルの生産量は、前年と比べて4.2%増加し、今後も増加傾向の見込みである。しかし、国際市場価格とEU市場価格の格差により輸出は減少の見込みである。
【矢野 麻未子 平成25年3月25日発】
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