2013CAP改革、いよいよ大詰めへ
2011年10月12日に欧州委員会より提案された「2013CAP改革案」は、欧州議会、欧州理事会の決定を経て2014年1月より施行される予定である。
しかし、欧州理事会における2014〜2020年の多年次共通予算が2012年内に決定に至らず、2013年2月7日及び8日によやく決定された。このため、CAP改革についても予算の決定が前提であるとの見解から欧州議会および欧州理事会における検討がずれ込んでおり、一部の制度について2014年1月からの適用開始は困難となる可能性が出ている。
CAP改革の動向
欧州委員会は2011年10月12日、「2013CAP改革案」を提案した。この提案に対して、欧州議会は、今年3月13日に欧州議会の意見を公表し、欧州理事会は、3月25日に欧州理事会の意見を公表した。欧州理事会は、これに先立ち3月18日及び19日に開催された委員会において、欧州議会の意見を踏まえてCAP規則に対する姿勢として以下の4点を示した。
・生産者に対する直接支払は、支援レベルを国内及び域内において平準化の方向とする。
・単一共通市場(SCMO : Single common market organisation)は、合理化、規模化及び簡素化を図るとともに、生産者と中間組織との連携を促進させる。
・地域振興政策は、国及び地域の特性を尊重するとともに、EUとの協調も図る。
・CAPに係る財政、管理及びモニタリングに関しては、この横断的な関連事項が加盟国において適切に管理・運営される仕組みとする。
また、欧州理事会の意見として公表された主な内容は以下のとおり。
(1) 直接支払
1) 直接支払の平準化:欧州委員会の提案による「2019年までの完全な適用」は、各加盟国の生産状況に適した弾力性のあるものとする。
2) グリーニング(greening:緑化):欧州委員会の提案である「7%の休耕など環境用地」は、最初5%から開始し、2017年に欧州委員会により作成される報告書を基にその後7%まで引き上げていくか検討する。また、環境用地のうち50%を地域や生産者組合などによって充てることを可能とする。
3) カップル支払:欧州委員会の提案である「カップル支払もしくは単一面積支払を、既に実施している加盟国については、同様に予算枠の10%までを適用可能とする。その他の加盟国は5%まで可能とする。」は、それぞれ12%、7%に引き上げる。
(2) 単一共通市場
1) 砂糖におけるクオータ制度:2016/17年度まで延長する。
2) 介入買入及び民間在庫補助:普通小麦、バター、脱脂粉乳、大麦、とうもろこし、米、牛肉及び子牛肉について介入価格及び介入買入量を固定とすることを支持。また、民間補助に、「生鮮もしくは冷蔵の8カ月以上の牛肉」を含めることを妥協案として提案する。
CAP予算の動向
欧州委員会の提案では、CAP予算は、3,717.2億ユーロ(44兆6064億円:1ユーロ=120円)となり、現在(2007-2013)の多年次共通予算である4,160億ユーロ(49兆9200億円、うち、直接支払・市場介入などが含まれる第1の柱として2,810億ユーロ、地域振興などが含まれる第2の柱として899億ユーロ)の引き下げが提案された。多年次共通予算の引き下げは、EU創設以来、初めてのこととなる。またこの提案を受けて、欧州理事会は、2013年2月に17日及び18日かけて欧州の総多年次共通予算について決定を行った。欧州理事会は、欧州委員会の提案より更に引き下げた3627.9億ユーロ(43兆5348億円、うち第1の柱に2778.5億ユーロ、第2の柱に949.4億ユーロ)とした。
この多年次共通予算の最終決定には、欧州議会の同意をもって欧州理事会の満場一致によって決定されるが、「予算の項目間における更なる弾力性が必要である。」として欧州議会の同意が得られていなく検討が続けられている。
今後のスケジュール
4月11日から欧州委員会、欧州理事会及び欧州議会の三者による検討が開始する。6月末までに23回のミーティングを踏まえて最終決定とする予定である。
【矢野 麻未子 平成25年4月11日発】
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