欧州委、2014年度の農業政策は移行措置の適用を提案
欧州委員会は4月18日、2014年度からの開始を予定している、新たなCAP(Common Agricultural Policy:共通農業政策)政策について、円滑な移行ができるよう移行措置(一部について施行を遅らせる)の適用を提案した。
これは、欧州委員会、欧州議会及び欧州理事会で現在、6月末までに2013CAP改革の最終合意に向けて活発な議論を行っているが、2014年1月の全面施行には間に合わないからだとしている。
この提案に際し、欧州委員会のダチアン・チオロシュ農業・農村開発担当委員は、「2014年度のCAPにおける直接支払は現行制度を適用し、財政は新たな予算枠組みを適用することを提案する。なぜなら、EU共通農業予算の適切な運営管理のためには、支払機関における準備期間と新たな規則に対する生産者の理解が重要であり、これらの準備が整う前に強行的な施行は適さない。」と述べた。
欧州委員会の主な提案は以下のとおり。
提案の概要
欧州委員会は、2014年1月からの新たなCAPの施行に向け、改革案の合意を得るため欧州議会及び欧州理事会と活発な議論を行っている。現行のCAPから新たなCAPへの円滑な移行のためには、技術的な調整が必要であり、それと同時にCAPの連続性の確保も必要である。これを実現するため、この移行期間は、移行措置の適用が必要である。
第1の柱の直接支払に関しては、加盟国、特に支払機関における支払方法の修正や生産者に対する新たなCAPの周知のための準備期間が必要となる。そのため、2014年度は、移行措置を適用とする。
第2の柱の地域振興政策に関しては、地域振興政策の基盤ともいえる農業環境、気象措置及びクロスコンプライアンス規則の定義の確定などが、第1の柱の直接支払と深く関わっている。そのため、移行期間における措置方法については、各要件について現行規則と新規則との間における検証が必要である。しかし、地域振興政策においても途切れることなく運用されることが重要であり、移行措置を適用とする。
提案の法的要素
直接支払の移行措置は、現行制度における主要スキーム(単一支払、単一面積支払い、カップル支払、68条における特定支払)の延長により対応する。また、これらには、域内における直接支払の平準化を含めた欧州理事会及び欧州議会により決定された財務的事項を組み込む。
地域振興政策は、財務的な変更を含めて現行の規則に対して移行措置適用するか、具体的に検証および決定しなくてはならない。また、これらの移行措置は、新たなCAPの基本的方向性とクロスコンプライアンスについては適用をすべきである。
また、移行措置には、既に欧州議会および欧州理事会の決定事項である第1の柱と第2の柱の予算組み替えの柔軟性を考慮した措置としなくてはならない。ただし、この組み換え可能な割合については、欧州委員会の提案では全体予算の10%以内としているに対し、欧州議会は15%以内とするとしており、合意が得られていない。
予算
この移行措置は、2015年度の多年次共通予算とCAP予算に対してのみ適用する。CAPに関しては、現在検討されているCAP改革による新たな提案を盛り込んだ政策が対象となる。
なお、以上の提案は、欧州議会及び欧州理事会にて本年末までに合意を得る必要がある。
【矢野 麻未子 平成25年5月7日発】
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