日-EUのFTA交渉に対して欧州委員会がコメントを発表
6月17日、欧州委員会は日-EUのFTA交渉について、以下のコメントを公表した。
日-EUのFTA交渉は、本年4月15日から19日かけてブラッセルで前向きな検討が行われた。さらに、6月24日から7月3日にかけて東京で更なる作業が進められ、10月に次回ラウンドが開催される予定である。
EUにとって日本は第7位の貿易相手国であり、アジアでは中国に次ぐ第2位の相手国である。一方、日本にとってEUは、中国、米国に次ぐ第3位の貿易相手国である。
当該FTAが締結されれば、EUにおける経済利益は、GDPで0.6%〜0.8%の増加、40万人の雇用創出が見込まれている。EUから日本への輸出は32.7%増加し、日本からの輸入は23.5%増加する見込みである。
交渉における検討範囲
日本との交渉では、EU側は日本の非関税障壁と公共調達市場の開放に対して言及する。また、双方の目標としては、物品、サービス及び投資だけでなく、貿易関連の問題に対する斬新的かつ相互の自由を保護したルールの締結を目指すことである。
交渉は、2012年5月に設置されたスコーピング作業(協定の交渉範囲を確定するもの)を基に進められる。このスコーピング作業により、両者とも野心的な自由貿易アジェンダに対する意欲と能力があることが実証された。
また、欧州委員会は、日本に対して鉄道及び都市交通に対する公共調達の市場開放に対する非関税障壁撤廃への特定のロードマップについて合意を得ている。
非関税障壁の撤廃が、欧州企業にとって日本市場への参入を可能とする重要性を考慮し、理事会による交渉の指令には、EU側の撤廃と日本側の非関税障壁の撤廃は、並列的に進めることが示されている。
さらに、もし日本側がこれら非関税障壁の撤廃に対して譲歩を見せなかった場合には、1年後に交渉中断の許可が盛り込まれている。また、欧州におけるセンシティブな分野の保護のためのセーフガード条項も設置されている。
経緯
2011年5月、日-EUサミットにおいて、日本とEUは、FTAと政治的な枠組みの合意に対して、準備を開始することを決定。スコーピング作業の結果に基づき欧州委員会は、交渉に入るための承認を理事会に求めた。
1年にわたる集中的な議論により、2012年5月、欧州委員会は、EUの全ての市場を対象とした野心的なアジェンダを日本と締結。2012年7月18日、欧州委員会は、各加盟国に対して、日本とのFTA交渉開始合意の承認を要求。2012年11月29日、欧州理事会は、欧州委員会に対して、日本との交渉開始を承認。
日-EU貿易状況
EUにとって、日本はアジアにおいて中国に次ぐ貿易相手国である。2011年のEUから日本への輸出額は、490億ユーロ(6兆5170億円)となった。主な輸出品は、輸送機器、化学製品および農産物である。一方、EUは、日本から主に輸送機器および化学製品を輸入しており、輸入額は675億ユーロ(8兆9775億円)となった。商業サービス分野では、日本への輸出額は159億ユーロ(2兆1147億円)、日本からの輸入額は218億ユーロ(2兆8994億円)である。
また、日本は、EUへの主要な投資家でもあり、2011年のEUへの対内FDI(直接投資)残高は、1442億ユーロ(19兆1786億円)に達する。日本の対内直接投資は、1990年代半ばに増加したが、その他のOECD加盟国と比べて低い。(2011年のEU投資価値は858億ユーロ(11兆4114億円)
【矢野 麻未子 平成25年6月18日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際グループ)
Tel:03-3583-9805