EUの貿易交渉の状況
欧州委員会は8月1日、EUの貿易交渉の進捗状況を公表した。この公表に際し欧州委員会は、「今後数年にわたり、世界の全ての需要の90%はEU以外の地域で生成される。正にこの状況こそ、EUがFTAなど主要国との新たな貿易交渉を進め、欧州のビジネスがより多くの市場機会を有するため、最も重要かつ優先事項とする理由である。もし、現在の自由貿易交渉が全て完了した場合、EUのGDPは2.2%上昇、金額にして275億ユーロの増加、約2万2千人もの新たな雇用を生むこととなる。」とコメントし、EUの経済発展における通商交渉の重要性を示した。
公表の主な内容は、以下のとおり。
【主な交渉中のもの】
〇米国
環大西洋貿易パートナーシップ(TTIP: the Transatlantic Trade and Investment Partnership)は、2013年7月8日から12日の間、ワシントンで第1ラウンドを開催。20の分野にわたり交渉グループが設置され、関税や技術基準などを含めて両者の利害について検討を行っている。本協定締結により、EUは119億ユーロの経済的利益を得、1世帯当たり545ユーロの所得増加になると分析。第2ラウンドは、2013年10月にブラッセルで開催予定。
〇日本
2013年4月に経済連携協定(EPA)交渉を開始、6月に第2ラウンドが開催された。EUにとって日本は、アジア地域で中国に次ぐ第2位の貿易相手国であり、この締結により日本への輸出は30%増加、EUのGDPを0.6%増加させ、40万件の新たなビジネスが生まれると予測。次期ラウンドは2013年10月にブラッセルで開催予定。
〇ASEAN
現在EUは、ASEAN地域の4か国(シンガポール、マレーシア、ベトナム、タイ)との間で自由貿易協定(FTA)交渉を継続中。シンガポールとは2010年から交渉を開始し、2012年12月にFTA交渉が妥結。しかし、その後、投資保護に関して再協議を行っており発効時期は未定。タイとの交渉は本年3月に開始、第2ラウンドは2013年9月にバンコクで開催予定。
EUにとってASEAN地域は、貿易相手国第5位(輸出額:2128億ユーロ)であり、今後、その他のASEAN地域との交渉を進め、地域対地域のグローバルな貿易協定に統合したいと考えている。
【交渉予定のもの】
〇 EU-中国投資保護協定(Agreement on investment protection) 欧州委員会は5月23日、中国との投資保護の交渉開始許可を加盟国に申請。双方はすでに2012年2月に開催された第14回EU-中国サミットで、交渉を進めることを表明している。現在、本交渉開始の承認については評議会で検討中。 EUにとって外国直接投資は、リスボン条約(2009年12月)で排他的権限となっており、独立した投資協定として初めてのものとなる。
【矢野 麻未子 平成25年8月19日発】
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