EUの豚飼養頭数、繁殖母豚を中心に減少傾向が継続
欧州委員会統計局(Eurostat)は9月6日、主要な養豚生産国14カ国の豚飼養頭数(2013年5、6月現在)を公表した。
欧州連合(EU)では、豚に対するアニマルウェルフェア規制が強化され、2001年8月に決議された理事会指令(2001/88/EC)に基づき、2013年1月から妊娠母豚のストール飼いが禁止された。この規制強化を一因として、近年、繁殖母豚が減少傾向にあり、今回公表された統計でもその傾向が裏付けられる形となった。
なお、14カ国の一つであるポーランドについては、データに誤りがあると伝えられたことから除外している。
総飼養頭数は1.4%減、繁殖母豚は2.8%減
公表された統計の性別・生育状況別の頭数をみると、総飼養頭数が前年比で1.4パーセント減少したのをはじめ、全般的に減少傾向にある。特に、繁殖母豚は、同2.7パーセントの減少となった(表1)。
英国の農業・園芸開発委員会(AHDB)の分析によると、2013年は前年と比較し、飼料穀物価格がやや下落傾向にあるため、一部の生産者が肥育期間を延長した結果、肥育豚(110kg以上)(前年比7.4%増)が増加したとみている。一方、初妊母豚(同1.9%増)や未経産母豚(同0.7%増)がわずかに増加したのは、飼料価格の下落と好調な豚枝肉価格の影響を受け、生産者が将来的な増産を図っているためと分析している。ただし、肥育豚(50〜80kg)(同2.0%減)は減少しており、2013年内は供給不足感が継続するとみている。
ほとんどの主要国で飼養頭数が減少
国別の飼養状況をみると、総飼養頭数は、英国、スウェーデンを除き、ほとんどの国が減少した(表2)。
特に、イタリアの減少が大きく、前年比6.6パーセントの減少となった(表3)。内訳をみると、同国の特徴である生ハム用の肥育豚(110kg以上)は増加(前年比23.2%増)したものの、子豚(同23.8%減)、育成豚(同26.2%減)、肥育豚(50〜80kg)(同9.0%減)は、それぞれ大きく減少しており、今後の豚肉生産量の減少が懸念される。
繁殖母豚は減少傾向も、国により状況にばらつき
繁殖母豚頭数についてみると、スペイン、ドイツ、フランスで減少した一方、デンマーク、オランダ、イタリアでは、わずかに増加した(表4)。2013年1月から開始された養豚のアニマルウェルフェア規制強化への対応に関し、各国の進捗状況の違いを表しているものと考えられる。
【宅間 淳 平成25年9月30日発】
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