欧州委、12/13年度の生乳供給実績を公表
生乳出荷量、対前年比0.6パーセント減
欧州委員会は10月1日、2012/13年度(4月〜翌年の3月)の生乳供給量を公表した。EUでは、生乳クオータ制度に基づき、各加盟国が9月1日までに前年度の生乳供給量をEUに報告することとなっており、今回の公表はこれを基にしたものである。
12/13年度のEU27カ国全体の生乳出荷量は、対前年度比0.6パーセント減の1億3967万120トンとなり、生乳クオータ換算による脂肪調整後出荷量は、1億4000万4222トンとなった。近年、生乳供給量は継続的に増加傾向にあったが、2012/13年度は減少に転じる結果となった。
加盟国間で格差拡大
生乳クオータ制度は、生産者が乳業メーカーに出荷する「出荷クオータ」と、生産者が消費者に直接販売する「直接販売クオータ」の2つで設定されており、生乳クオータを超過した場合、課徴金(超過分100キログラム当たり27.83ユーロ(約3,701円::1ユーロ=133円))が課せられる。
2012/13年度の生乳クオータ出荷分で超過した国は、オーストリア、ドイツ、デンマーク、ポーランドおよびキプロスの5カ国となり、前年度の6カ国から1カ国減少した。当該5カ国の課徴金額は、対前年度5.8パーセント減の4555万5千ユーロ(60億5881万円、1ユーロ=133円)と減少した。また、直接販売分は、オランダが1,100トン超過し、課徴金額は30万1千ユーロ(4003万円)となった。最も超過率が高かったのはオーストリア、次いでキプロス、デンマークと続いた。
一方、EU全体の生乳出荷量は、当該年のクオータ量の6.0パーセント減と依然として下回っており、前年度の4.7パーセント減からクオータ達成率はさらに下がった。
近年の動向として、加盟国間におけるクオータ達成率に格差が広がってきており、達成率が高いもしくは超過してしまう国(イタリア、オーストリア、ドイツおよびオランダなど)と達成率が低い国(ブルガリア、ルーマニアおよびハンガリーなど)とに分かれるなど、EUの中で生乳生産の二極化が進んでいることがうかがえる。
EUは、1980年代に生産過剰を抑制するため、生乳クオータ制度を導入したが、市場志向性を高めて競争力を上げることを目的に、2015年4月1日に廃止することが決まっている。EUでは、生乳クオータ制度廃止への円滑な移行を促すため、2013/14年度まで毎年クオータ量を1パーセントずつ引き上げ、2012年には「ミルクパッケージ」を採択し、予想される乳製品市場の混乱防止を図っている。欧州委員会は、2014年の半ばまでに当該制度廃止の影響について、報告書を公表する予定である。
【矢野 麻未子 平成25年10月3日発】
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