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米国および世界の牛肉等需給見通し〜2014 Cattle Industry Convention〜

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 全米肉用牛生産者・牛肉協会(NCBA)、牛肉ボード、CattleFax社他の共催による2014年Cattle Industry Conventionが、2月4日〜7日の4日間、テネシー州ナッシュビルにおいて約8千人が参加して開催された。同会議の中で、CattleFax社(米国の会員制牛肉関係調査会社)により、食肉、飼料穀物等の需給見通しが公表されたことから、その概要を報告する。

【気象見通し】

・過去3年間を見ると、2011年は米国南東部で干ばつが発生し、2012年は米国全体に広がるという最悪の年となり、2013年には干ばつは西海岸付近に縮小した。

・2014年は、欧州モデル、米国モデル共に米国西海岸から赤道にかけての海水面温度の上昇(エルニーニョ現象)の発生が予測されており、平年並み以上の降水量が見込まれている。現在までブラジル南部、アルゼンチンでは高温・乾燥状態が続いているが、エルニーニョ現象により、回復が見込まれる。豪州は2013年に干ばつにみまわれたが、エルニーニョ現象により2014年も状況が悪化する恐れがあり、小麦生産への影響が懸念される。

・2014年の米国の気象は、東半分は多雨、西半分は干ばつというふうに二分される可能性がある。2014年の春は、特に中西部の東側で非常に温暖になると予想されるが、全国的にも平年より高温で順調な降雨が見込まれるので、作物の播種は早まるだろう。2014年は、夏にも平年並みの気温と順調な降雨が予想されているので、作物にとっては良好な年になると予想される。

【穀物等需給見通し】

・世界のトウモロコシ在庫量はこの4年間で最大となる見込み。2014/15年度(9月〜翌8月)の在庫率は14〜15%程度となり、価格はさらに低下すると見込まれる。

・世界の大豆在庫量は急速に増加する見込み。これは主にブラジル、アルゼンチンでの記録的な収穫量によるもので、米国の在庫水準は記録的に低いと予測。

・2014年の米国の作付面積は、トウモロコシが93.5百万エーカー、大豆が80.0百万エーカー、小麦が57.1百万エーカーの見込み。

【世界の食肉需給見通し】

・2014年の世界の食肉生産量は牛肉が前年並み、豚肉が前年比1%増、鶏肉が同3%増と見込まれる。牛肉生産量は、インドとブラジルで増加が予想されるものの、米国とカナダで減少が予想されることから、前年並みとなっている。一方、豚肉、鶏肉生産量の増加は、人口増加と収入の増加による食肉消費量の増加を反映したものとなっている。

・牛肉の輸出は、ブラジルが第1位、インドが第2位となっており、米国を含めた上位5カ国で世界の輸出量の68%を占めている。一方、世界の輸入量については、牛肉が前年比4%増、豚肉が同2%増、ブロイラーが同2%増の見込み。特に牛肉については、生産量が増えない中での輸入増となっており、生産国の国内需給をかく乱させる要因となっている。

・世界の食肉需給を見る上では、中国の動向がカギとなる。農業は、中国にとっては、常に内政上のアキレス腱となっている。中国は、2013年後半に牛肉の輸入を急増させており、世界最大の牛肉輸入国となった。供給量不足を反映し、牛肉価格が急上昇しており、2014年の中国の牛肉小売価格は、米国並みの1ポンド当たり5米ドルにまでなっている。このような状況は、牛肉が高所得を象徴する贅沢品になっているための需要増によるものである。

・中国の牛肉輸入先は、インドが33%、ブラジルが25%、豪州が12%、米国が8%、ウルグアイが6%となっているが、2013年後半には豪州からの輸入が急増し、月間18,000トン程度となった。豪州の中国向け輸出が増えた影響で、米国内のひき材としての豪州産牛肉の供給がタイトになるという影響が出ている。

・中国は、2006年に米国産牛肉の輸入を解禁したが、現在でもまだ、輸出認定処理場や輸出証明の承認は行っていない。このため、米国産牛肉の中国への輸出は、香港経由で行われている。

・2014年の米国の牛肉輸出は、(1)ロシアが引き続き輸入を認めないと予想、(2)米ドル高による競争力低下、(3)中国の需要増加、(4)安定的な世界経済、といった要因を反映し、ほぼ2013年並みになると予想される。

【米国の需給および価格見通し】

・米国内の牛肉需給は、(1)鶏肉の生産増による低価格食肉へのシフト、(2)豚流行性下痢(PED)の影響による豚肉生産量変動の可能性、(3)減少を続ける牛頭数、といった生産・消費動向の影響の他、政治的な問題として(1)原産地表示義務(MCOOL)の世界貿易機関(WTO)による判断、(2)メキシコによる米国産鶏肉のアンチ・ダンピング税導入の可能性、(3)ロシア、中国との成長ホルモンを巡る係争、(4)環太平洋パートナーシップ(TPP)協定が国内需給に影響を与える可能性がある。

・2013年の牛と畜頭数は前年に比べ20万頭減、2014年は同56万頭減、15年は同50万頭減少すると推測される。

・めす牛の更新は、2014年は前年に比べ9万頭増の550万頭、2015年は28万頭増の575万頭と見込まれている。

・乳牛の飼養頭数は、2014年は前年に比べ1万頭減少する一方、2015年は5万頭増加が見込まれている。

・2014年の食肉生産量について、牛肉は3.5%減、豚肉1.6%増、鶏肉3.7%増、全体では1.2%増となり、米国では鶏肉の消費がさらに増えると見込まれている。

・2014年には、子牛、肥育素牛、肥育牛のすべての価格が上昇すると予測されている。

・2014年のトウモロコシ価格は、ブッシェル当り3.6ドルまで低下すると予想しており、干ばつにより草地の回復が遅れているために上昇している乾草と同程度の価格水準になる見込み。
【小林 誠、横打 友恵 平成26年2月13日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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