欧州連合、ロシアをWTOに提訴(EU)
欧州連合(EU)は4月8日、EUからの豚肉輸入を全面的に禁止しているロシアに対し、不当な行為であるとして、世界貿易機関(WTO)に提訴した。
2014年1月にリトアニア、2月にポーランドで、野生イノシシに計4件のアフリカ豚コレラ(ASF :African Swine Fever)の発生が確認されたことを理由に、ロシアは1月24日から全てのEU加盟国からの豚肉輸入を禁止した。これに対しEU側は、地域を限定した輸入禁止とするよう求めてきたが、これまでのところロシアは応じていない。
欧州委員会のカレル・デ・フフト通商担当委員によると、EU全域からの豚肉の禁輸はWTOの規則に反するものであるとして、EUの豚肉生産者を守るためにWTOへの提訴に踏み切ったとしている。
なお、今回の禁輸措置は、ウクライナ情勢で対立するEUとロシアの政治的問題に関連したものとの報道もあり、問題は長期化するとの見方もある。
EU側の主張
・ロシアは、同国国内でASFが発生しているにもかかわらず、同国の豚肉市場の閉鎖などの適切な措置を取っていない。
・リトアニアとポーランドよりもASF発生件数が多いベラルーシに対し、輸入禁止措置を取っていない。また、同様の状況にあるウクライナについても、最近まで禁輸措置を取っていなかった。
・これらロシアの対応は、ダブルスタンダード(二重基準)であると判断される。EU産豚肉を、他の貿易相手国やロシア国内の豚肉と差別するべきではない。
今後の予定
・両者で和解に向けての協議を実施する。
・60日間の協議で和解に達しなかった場合、欧州委員会は、ロシアの措置の合法性を裁定するためのパネルの設置をWTOに要請することができる。
【参考:EU・ロシア間の貿易実績】
1 豚肉(2013年)
・ロシアへの豚肉輸出額は、14億ユーロ(2002億円、1ユーロ=143円)
・EUの豚肉輸出総額、輸出量ともおよそ25%を占める。
2 貿易総額(2013年実績)
・ロシアは、EUにとって第3位の貿易相手国。
・EUからロシアへの輸出総額は1230億ユーロ(17兆5890億円)
・ロシアからEUへの輸出総額は2320億ユーロ(33兆1760億円)
【宅間 淳 平成26年4月11日発】
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