連邦政府が2014/15年度予算案を発表、農業分野は研究開発に重点(豪州)
豪州連邦政府は5月13日、アボット政権として初めてとなる2014/15年度(7月〜翌6月)の連邦予算案を発表した。2013/14年度の赤字額が499億豪ドル(4兆8403億円:1豪ドル=97円)と、前年度から2.6倍に膨れ上がることが見込まれる中、2014/15年度の予算案は、連邦政府の財政再建を目指し緊縮財政をとる。これにより、2014/15年度の赤字額を298億豪ドル(前年度比40.3%減、2兆8906億円)、2017/18年度には28億豪ドル(2716億円)まで減らすとしている。
また、具体的な財政再建対策の一つとして実施されるのが、高所得者への臨時課税である。18万豪ドル(1700万円)以上の所得者に対し、2014年7月からの3年間、2%の課税が適用される。一方、企業に対しては、炭素税や資源税の廃止と併せて、3000社の大企業を除き1.5%の減税を実施するとしている。
農業部門の競争力強化に新たな資金を投じる
農業部門の予算として、今年度新規導入されるのは、競争力強化対策費である。研究開発などに対し、2017/18年度までの4年間で総額1億5000万豪ドル(約146億円)が投じられる。また、2014年2月26日にアボット首相とジョイス農相が共同で発表した干ばつ対策パッケージも継続され、2017/18年度までに既に支出されているものも含め総額3億2000万豪ドル(約310億円)が投じられる。これらの対策は次の通り。
・農家の収益に資する研究開発への資金援助(1億豪ドル:97億円)
・家畜伝染病などの検疫体制の強化(2000万豪ドル:19億4000万円)
・小規模企業の農産物輸出に対する資金援助(1500万豪ドル:14億5500万円)
・農薬や動物医薬など化学薬品の利用改善(800万豪ドル:7億7600万円)
・干ばつ対策パッケージ−3億2000万豪ドル(310億4000万円)
今年3月1日より開始されている農家収入支援対策の他、干ばつによって経営悪化に直面する農家への無利子融資(2年間で総額2億8000万豪ドル)、干ばつ地域における家畜の水場へのアクセス改善のためのインフラ投資(向こう1年間で総額1200万豪ドル)、干ばつに苦しむ農家に対する社会福祉サービスやメンタルヘルスケアの提供(前年度から2年間で総額1070万豪ドル)などが用意されている。
生産者団体は、予算案について概ね好意的な反応
全国農業者連盟(NFF)は今回の予算案について、概ね期待していた通りのものであったと好意的に受けとめている。農業分野における新たな研究開発への予算投入や、農業分野以外の燃料税が物価上昇に合わせて引き上げられることになった中で、農家が農用地などの一般道路外で燃料を使用した際の還付金は維持されたこと、輸送インフラへの投資促進などを、高く評価している。
【伊藤 久美 平成26年5月16日発】
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