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欧州衛生当局、PED侵入阻止のため衛生基準を強化(EU)

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 欧州委員会保健・消費者保護総局(DG SANCO)の発表によると、5月6日に開催した同局が設置する食品連鎖・動物衛生常設委員会(SCoFCAH)において、北米とアジアで感染が拡大する豚流行性下痢(PED)に対応するため、豚および豚由来製品の輸入規制について検討し、一部の製品の輸入に際し、衛生条件を強化することが決定された。

 現在、世界にまん延しているPEDは、2つのウイルスによって引き起こされている。1つは、アルファコロナウイルスであるが、この疾病は国際獣疫事務局(OIE)のリストに掲載されていないことから、国際的な防疫基準が制定されていない。このウイルスは、かねてからEU域内に存在しているものの、輸入を含めてEU域内でのまん延を制御するための具体的かつ一貫的な対策を備えていなかった。
 2つ目は、新たに出現したデルタコロナウイルスだが、ヨーロッパにおいてこのウイルスがどのように発生したのか有用な情報が得られない。
 こうした状況を受け、EU各加盟国は、農家レベルにおけるバイオセキュリティレベル強化の必要性を強く主張しているところであった。

 今回の常設委員会では、生体豚、豚血液を原料とする製品および豚の精液のEU域内への輸入基準を議論し、一部の衛生条件が強化された。

1 生体豚

 米国およびカナダから輸入される生体豚は、既に現在の衛生基準と検疫が厳格に運用されている。2013年の両国からの輸入実績は約250頭であり、近年は輸入生体豚の半数程度を占めている(図)。
 両国の主務官庁から寄せられた現段階の状況によると、現在、EUに輸送中の生体豚はいない。なお、米国では、輸出前に40日間の拘留、30日間の検疫が義務付けられているが、いずれも生体豚はいないと報告されている。
 このため、現行の輸入条件により、PED発生国からの生体豚輸入は制限され、喫緊の課題では無いと判断できることから、現行条件の見直しについては、6月に開催される次回の常設委員会で諮ることとなった。また、この問題については、5月末に開催されるOIE総会においても議論される予定である。
グラフ

2 豚血液を原料とする製品

 EUでは、豚の血液を利用した製品は、主に子豚の飼料に使用されており、認可を受けた多くのEU域外の国から輸入されている。不適切な加熱処理と、加熱処理後の汚染(コンタミネーション)が生じた場合、ウイルスのまん延が引き起こされる。
このため、常設委員会は、次の処理を行った製品のみ、輸入を許可する暫定措置を承認した。
 (1)コロナウイルスを不活化するため、80度以上の加熱処理を行う。
 (2)加熱処理後、製品に混入した他のウイルスを不活化するため、室温で6週間保管する。

3 豚の精液

 豚の精液を介したコロナウイルスの伝播は、無視できる程度の要因であるとされた。また、輸入精液については、検疫措置と採取元の種雄豚に対する臨床的兆候の非存在性確認などの措置が既に実施されている。こうした措置により、侵入は防止できていることから、現行の輸入基準を継続することが合意された。

 なお、フランス農業大臣は、今回の委員会開催に先立ち4月30日に、生体豚、豚の血液を原料とした製品および精液について、米国、カナダ、メキシコ、日本の4カ国からフランスへの輸入を停止する措置を講じていた。しかし、今回の常設委員会では、フランスの主張に沿った合意とはならなかった。
【宅間 淳 平成26年5月16日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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