豪州における低価格PB牛乳の販売競争と乳業メーカーの動向
1 豪州の低価格PB牛乳
豪州では、2011年以降、2大スーパーマーケット(コールズ(Coles)とウルワース(Woolworths))による低価格のプライベートブランド(PB)牛乳の販売競争が活発化している。これは、豪州の堅調な牛乳消費と、低価格牛乳を販売の目玉商品とするスーパーマーケットの戦略が背景にあり、現地では「Milk Price War(牛乳価格戦争)」といわれている。
PB牛乳はおおむね1リットル当たり1豪ドル、つまり約100円で販売されており、ナショナルブランド(NB)牛乳との価格差は1豪ドル、乳飲料においては2豪ドル近くの価格差となっている(表1)。
こうした販売競争により、スーパーマーケットにおけるPB牛乳の販売数量は、2010/11年度(7月〜翌6月)から2011/12年度にかけてかなりの程度増加している。しかしその一方で、2012/13年度にはNB牛乳の販売数量も増加している。これは、一部の乳業メーカーが、PB牛乳に対抗するため、NB牛乳の販売価格を下げたことなどが影響しているとみられている。結果的にはスーパーマーケットにおける牛乳全体の販売数量が増加する形となっている(図)。
2 乳業メーカーの動向
こうした中、各乳業メーカーは、2大スーパーマーケットにおけるPB牛乳の製造販売契約の獲得争いを活発化している。
以下に示すとおり、各乳業メーカーはそれぞれの州において、2大スーパーマーケットの主要な供給元となっている(表2)。
(1)マレーゴールバン
豪州最大手の酪農協系乳業メーカーであるマレーゴールバン(MG)は、2014年7月以降、ビクトリア(VIC)州とニューサウスウェールズ(NSW)州にて、コールズとのPB牛乳の製造販売契約を締結している。MGはVIC州を中心に国内外への乳製品の販売を行っているが、NSW州において、新たな生乳供給ネットワークの構築や、乳業工場の建設を進め、牛乳市場への進出を拡大していくものとみられている。
なお、MGはコールズとの10年にわたるPB牛乳の長期契約についても合意しており、長期安定的な生乳の供給先を確保している。
(2)フォンテラオーストラリア
フォンテラオーストラリア(NZ最大手の酪農協系乳業メーカーフォンテラの豪州事業、以下「豪州フォンテラ」)は、VIC州におけるウルワースとのPB牛乳製造契約を締結している。さらに豪州フォンテラとウルワースは2015年以降の10年に及ぶ長期契約についても合意している。
このため、シドニーに次ぐ豪州第2の都市メルボルンを有するVIC州において、MGと豪州フォンテラは、それぞれコールズとウルワースのPB牛乳の供給元として、競合する形となっている。こうしたことから、豪州フォンテラは、VIC州において、乳業工場への新たな投資計画を進めており、積極的に事業拡大を図っている。
(3)ライオン
豪州国内向けの牛乳や乳飲料などが主力商品であるライオンは、2014年7月現在、クイーンズランド(QLD)州やタスマニア州、南オーストラリア(SA)州において2大スーパーマーケットとPB牛乳の製造販売契約を締結している。しかしその一方で、VIC州におけるウルワースとの契約が前年度で解消されたため、ライオン社にとって大きな痛手になるとみられている。
(4)パルマラット
フランスの大手乳業メーカーであるラクタリス傘下のパルマラット(イタリア資本)は、2014年7月現在、QLD州、NSW州、SA州、西オーストラリア州にて、大手スーパーマーケットとPB牛乳の製造販売契約を締結している。同社は、2014年3月に豪州の地方乳業メーカーであるハーベイフレッシュを買収したことで、事業を豪州全土に拡張しており、長期的には輸出市場への本格的な参入も予想されている。
【根本 悠 平成26年7月8日発】
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