豪州農業資源経済科学局(ABARES)は8月21日、肉牛生産者の経営状況調査の報告書を公表した。これによると、2013/14年度(7月〜翌6月)の1戸当たり現金所得は、北部が4万9000豪ドル(前年度比43.4%減、480万円:1豪ドル=98円)と2年連続で減少した一方、南部は8万5000豪ドル(同8.7%増、833万円)と、増加に転じた(表)。
2年連続での干ばつに見舞われている北部では、肉牛の出荷頭数は増加しているものの生体価格の下落により肉牛販売収入が減少したことや、不作による農作物販売収入の減少に加え、穀物など補助飼料購入費が増加したことなどで、現金所得は過去10年平均※の5割程度にまで減少した。また、肉牛の出荷頭数増加による飼養頭数の縮小が流動資産の減少につながり、農家収益は6万3000豪ドル(617万円)の赤字を計上し、赤字幅は前年度の10倍以上に膨れ上がった。
一方、南部では2013/14年度以降の気象状況の改善により、肉牛や農作物の販売収入が増加した結果、現金所得は前年度から増加に転じ、過去10年平均※からも1割以上上回った。ただし、南部でも飼養頭数の減少により、農家収益の赤字幅は拡がっている。
現在、米国の牛肉減産や各国の牛肉需要の高まりを受けて、肉牛や牛肉の価格は国際的に高騰しているが、豪州国内の肉牛価格は、干ばつによる出荷頭数の増加などから低水準で推移し、これまでのところ生産者は国際価格高騰の恩恵を十分に受けることができない状況にあった。しかしながら、今後、北部でも気象が改善し出荷頭数が減少すれば、豪州国内の肉牛価格は国際価格の高騰に追随するとみられており、生産者にとっては一刻も早い気象の改善が待たれるところである。
※ 2013/14年度を基準に物価変動の影響を除いて算出した実質ベースの値