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米国の義務的原産地表示(COOL)がWTO協定違反と裁定

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 世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会(パネル)は10月20日、メキシコやカナダがWTO協定違反として提訴していた米国の食肉の原産地表示(COOL)規則について、違反であるとの裁定を下した。COOL規則の問題については、2012年6月に外国産が米国産に比べ差別的に扱われ不利益を被っているとの裁定が一度下されている。これを受けて米国は、2013年3月にCOOL規則の改訂を行ったが、今回のパネルの裁定は、改めてこれを違反と判断するものとなった。

 今回の裁定について米国通商代表部(USTR)の広報担当者は、「WTOが、肉製品の原産地表示を求める米国の権利は認めたものの、現行の牛肉と豚肉の原産地表示の規制は、カナダとメキシコの家畜の輸出を差別するものだと判定したことに失望している。」とコメントし、今後の対応については、あらゆる選択肢について検討するとしている。なお、WTOの規則では、紛争の当事者は、60日間の異議申し立て期間が与えられている。

 また、関係団体からも声明が発表されており、米国食肉協会(AMI)と北米食肉協会(NAMA)は共同声明で、「米国農務省(USDA)の義務的COOL規則は、家畜生産者や食肉処理業者、食肉加工業者にとって負担となるだけではなく、WTO協定に整合するものではないことから、今回の裁定には驚いていない。異議申し立てはできるが、産業界や議会と協力し、国際的な義務に整合し、市場に安定性をもたらす改正をUSTRとUSDAに働きかけていきたい。今後の改正により、米国にとって最大かつ最も重要な貿易相手国との関係回復に資するだろう。」としている。

 全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)のBob McCan会長は、「生産者は、短絡的な規制の影響により、すでに販売料金の低下に苦しんでおり、フィードロットや牛肉処理工場の閉鎖に直面している。COOL規則は、消費者や生産者の利益とはならず、また、牛肉生産業界のみならず米国経済全体にも不利益を及ぼす可能性がある不十分な規制である。NCBAは、COOL規則がWTO協定に整合するものではなく、貿易相手を満足させるものでもない。」と主張している。

 豚肉生産者協議会(NPPC)のHoward Hill会長は、「米国は、カナダとメキシコからの報復措置を避ける必要がある。豚肉に対する報復関税は、米国の豚肉生産者にとって経済的に大きな打撃となるだろう。NPPCは、消費者に重要な情報を提供し、米国の国際貿易上の義務を守り、米国の食肉サプライチェーンを弱体化させず、不必要にコストを上昇させない表示方法を支持する。米国経済は、第1位および第2位の輸出市場への輸出が、関税により制限されることには耐えられない。議会とホワイトハウスは直ちにこの問題に対処する必要がある。」と米国への報復措置を避けるよう呼びかけている。

 一方、カナダは、米国がWTO協定の裁定に従わない場合、米国の農業と非農産品への報復措置を実施するため、牛肉、豚肉、鶏肉、チェリー、チョコレートなどの40近い米国製品を報復措置の対象とすると以前から公表している。なお、メキシコは、米国の報復措置の対象リストをまだ公表していない。
【渡辺 陽介 平成26年10月22日発】
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