2014/15年度の小麦、大麦はすべての州で減産(豪州)
小麦、大麦のいずれも減産
豪州農業資源経済科学局(ABARES)は12月2日、2014/15年度(7月〜翌6月)の冬作物および夏作物の生産見通しを発表した。このうち、冬作物である小麦と大麦はすべての州で減産し、小麦生産量は2322万2000トン(前年度比14.0%減)、大麦生産量は744万5000トン(同22.0%減)と見込まれている(図1、図2)。穀物生産地帯の大半で、冬から春先にかけての降雨が平年を下回ったことが要因となり、特に南オーストラリア(SA)州やビクトリア(VIC)州では深刻な降雨不足となった。ただし、前年度の冬作物生産量は、西オーストラリア(WA)州やSA州の増産により過去2番目の水準であったことから、今年度の小麦生産量は、依然として過去10年平均を上回る水準であり、大麦についてもやや下回る程度にとどまっている。
なお、品質面については、収穫作業がほぼ終了したクイーンズランド(QLD)州やニューサウスウェールズ(NSW)州北部で小麦のたんぱく含有量が高く、収穫作業が進行中の他州でも、おおむね良好との報告がなされている。
ソルガムは前年度から増加の見通しも、降雨不足が懸念
一方、夏作物の主要作物であるソルガム生産量は、133万8000トン(同20.9%増)と、大幅な増加を見込んでいる(図3)。前年度の生産量は、主産地であるQLD州南部やNSW州北部の干ばつによって、作付面積と単収がいずれも減少して大きく落ち込んだが、今年度は作付面積の回復を見込んでいる。ただし、継続する干ばつにより土壌水分量が低下していることから、収量の増加には生育期の降雨が不可欠としている。
こうした中、豪州気象局(BOM)は、12月から翌2月までの気象状況について、北部から中央部、東部にかけての広範囲で通常よりも乾燥かつ高温になると予測している。また、かねてより発生が危惧されていたエルニーニョ現象についても、発生を示すいくつかの兆候がすでに見られており、今後数カ月のうちに発生宣言がなされる可能性は70%としている。
肉牛の主産地であり、フィードロットも多いQLD州の穀物価格は、干ばつによる減産から、他州と比べて高騰している(図4)。飼料価格は2014年3月から5月にかけて高値で推移した後はいったん下落傾向にあったものの、10月頃から再び上昇傾向となり、ソルガムの生産状況次第ではさらに高騰する可能性があるとみる向きもある。
フィードロットにおける2014年7〜9月の飼養頭数は、干ばつによる放牧環境の悪化や穀物肥育牛への海外市場からの需要の高まりを受けて、2006年12月以来となる90万頭台と高水準を記録しており※、飼料需要も高まっているものと推察されることから、フィードロットや他畜産業の生産状況に影響を与える穀物の生産および価格の動向には注目が集まるところとなっている。
※ 海外情報「2014年9月のフィードロット飼養頭数は、史上3度目となる90万頭台(豪州)」 (
http://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_001138.html)参照
【伊藤 久美 平成26年12月5日発】
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