NZ一次産業省が農林水産業の見通しを公表、乳製品輸出額は減少の一方、牛肉輸出額は増加
ニュージーランド(NZ)一次産業省(MPI)は12月10日、今年6月に発表した「NZにおける農林水産業の見通し」の期中改訂版を公表した(表参照)。
なお、6月に発表した見通しは2014/15年度(7月〜翌6月)からの4年間に関する中期的な見通しであるが、期中改訂版は、直近の動向を踏まえた2年間の見通しである。また、NZの農林水産業は総じて輸出依存度が高いため、主に輸出に重きを置いた内容となっている。
乳製品輸出額は減少見通し
MPIによると、2014/15年度の乳製品輸出額は、記録的な高水準であった前年度を23.5%下回ると見込んでいる。この要因には、年度を通して乳製品の国際価格が低水準で推移することを挙げており、その背景として、中国とロシアの動向に焦点を当てている。中国は、2013/14年度に国内生産の減少を補うため大量の乳製品を輸入した結果、現在、在庫が過剰にあり、需要が減少している。また、ロシアについては、EU、米国、豪州などに対する禁輸措置により、ロシアへ輸出されるはずの大量の乳製品が行き場を失い市場の不安定要素となっているとしている。
一方、2015/16年度の乳製品輸出額は、前年度を5.3%上回ると見込んでいる。この要因としては、国際的に乳製品供給量の増加が緩やかである一方、中国の乳製品在庫の取り崩しが進み、2015年第2四半期には中国からの需要回復が見込まれることや、新興国を中心とした乳製品需要量の確実な増加から、乳製品の国際価格が回復するためとしている。
なお、乳製品輸出に大きく影響を与えるもう一つの要素であるNZ国内の生乳生産量については、2014/15年度から2年度連続で前年度を3%上回ると見込んでおり、一定の供給余力がある中、国際価格の変動が輸出額を決定する最大の要因と捉えている。
牛肉輸出額は増加見通し
MPIによると、食肉・羊毛の輸出額は、牛肉価格の大幅な上昇に伴う牛肉輸出額の増加が大きく貢献し、2014/15年度は6.4%、2015/16年度は2.3%それぞれ前年度を上回ると見込んでいる。MPIは、現在の米国を中心とする世界的な牛肉不足から、特に赤身率の高い加工向け牛肉の需要が高まっていることや、米国および豪州が干ばつ後の牛群再構築を進めるため、と畜頭数の増加が望めないことから、高い牛肉価格水準は、今後2年間継続するとみている。
このため、NZから米国への牛肉輸出量は急増し、2015年には、2004年以来初めて、米国の対NZ牛肉輸入に係る低関税割当数量の上限である21万3402トンに達するとみている。その一方、こうした米国からの強い需要により価格に敏感なアジア向けの輸出量は減少する可能性があるとしている。
また、現在の高い牛肉価格水準が継続すれば、肉牛生産者は牛群や牧草地に対して、より多くの投資が可能になるとしている。さらに、過去10年間には、かなりの数の肉牛生産者が、安定的な副収入を得るために酪農家の牧草地を管理するコントラクターや食肉加工場の労働者として働いてきたが、牛肉価格の上昇と乳製品価格の下落が重なり、こうした副業収入への依存は低下する可能性があるとしている。
【根本 悠 平成26年12月19日発】
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