NZ最大手乳業フォンテラ社、生乳獲得に向け新規事業をスタート
ニュージーランド(NZ)の最大手乳業メーカーフォンテラ社は12月11日、南島のカンタベリー、オタゴ、サウスランド地方において、「マイミルク」という子会社を通じて、これまでフォンテラ社に生乳を供給していない酪農家との生乳供給契約の拡大を目指す事業を開始することを発表した。
この新規事業では、酪農家は「マイミルク」と基本的に1年間の生乳供給契約を結び、最大5年まで契約が延長できる。また、取引乳価については、他社と競合し得る十分な水準である一方、フォンテラ社本体と契約する乳価を上回ることはないとしている。
そして、フォンテラ社本体との契約と比べた最大の相違点は、フォンテラ社本体は、傘下の酪農家に生乳の出荷量に応じた株式の購入を義務付けているが、「マイミルク」との契約に際しては、これを不要としている点である。一方、「マイミルク」に生乳を供給する酪農家は、フォンテラ社本体が傘下の酪農家に実施している経営支援、情報提供など一部のサービスは受けられないとしている。
また、フォンテラ社は、「マイミルク」を通じた生乳の供給量は、フォンテラ社全体のわずか5%程度にとどまると見込んでいる。そして、「マイミルク」との契約を経て、フォンテラ社本体との供給契約を希望する酪農家は、株式さえ購入すればいつでも可能であるとしている。
南島における生乳供給契約の維持・拡大を企図
「マイミルク」との契約は正式なフォンテラ社傘下の組合員になる前のいわば“準組合員”という意味合いが強い。この事業を開始した背景には、生乳生産が増加する南島において、生乳の供給契約を維持・拡大したいフォンテラ社の思惑がある。
2014年現在、フォンテラ社はNZ全体の集乳量の87%程度を占めており、南島においても約8割の生乳を集めている。しかしながら、フォンテラ社以外の大手乳業メーカーも南島に地盤を持っており、積極的に乳業工場への設備投資を行うなど、それぞれの地域で存在感を発揮している。そして、他の乳業メーカーは、契約にあたって酪農家の株式購入を条件としていないため、経営コストへの意識の高い酪農家などを中心に、同じ乳価ならば、株式購入という資金負担のないメーカーとの契約を望む傾向にある。こうした実態を踏まえ、フォンテラ社は“始めやすい形”で、酪農家との契約を獲得する事業を開始したとみられている。
その一方、フォンテラ社は既存のフォンテラ社本体の傘下の酪農家と「マイミルク」と契約する酪農家の間で、サービス部門の対応など取引条件に差をつけている。これは、株式購入という負担を強いている既存の酪農家の不満を和らげると同時に、「マイミルク」と契約する酪農家に対して、フォンテラ社本体との契約への移行を促す意図があるとみられている。
【根本 悠 平成26年12月19日発】
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