豪州の製糖事業への外資参入が進展
最終更新日:2015年2月16日
1 豪州の農林水産分野への投資状況
最近、豪州において、中国企業から農林水産分野への直接投資が増加している(表1)。2009/10年度(7月〜翌6月)までは、中国からの同分野への直接投資はなかったものの、翌年度から徐々に増加している。
こうした中、製糖事業への投資も開始されている。2012年には、中国の不動産開発業の上海中福集団(Shanghai Zhonghfu)が西オーストラリア(WA)州のキンバリー市北東部のカナナラ(KUNUNURRA)において、製糖事業を開始する計画が豪州の外国投資審査委員会(FIRB)で承認された。この総事業費は7億豪ドルと中国の農林水産分野への投資額としては巨額である。
上海中福集団は、現地に設立した農業投資のための子会社(キンバリー農業投資株式会社(KAI))を通じて、豪州のメディア王のPacker 一族が同地域に所有していた映画撮影等に使用されていた土地(1万5200ha)の借地権(50年間)をすでに取得しており、サトウキビ農場開発とともに豪州最大規模(1日当たりの原料処理量2万2000トン)の製糖工場を建設し、2018年からの稼働を目指している。
2 拡大する中国資本のサトウキビ農地取得の動き
さらに、KAIは、今後、最低でもサトウキビ200万トン以上の生産拡大を目指して、近隣の土地の取得に動いている。
2015年6月、豪州の大手肉牛生産事業者であるConsolidated Pastoral Company(CPC(注))が放牧地として使用している9600ヘクタールの土地の借地権が期限切れを迎えるが、CPCの最高経営責任者Setter氏は、土地の借地権の更新は行わず、KAIに借地権を引き継ぐ交渉をしていることを明らかにしている。
KAIが借地権を取得すれば、この土地はサトウキビ農場に転用されるとの見方が強い。
注:CPCは、欧州の大手株式投資会社のテラ・ファーマ社の傘下で、WA州、クイーンズランド(QLD)州および北部準州で合計56万ヘクタールの放牧地を所有し、年間36万頭の肉用牛を飼養。インドネシアでフィードロット事業にも進出している。
3 外資の比率が高まる製糖事業
豪州の製糖事業に対しては、2010年から外資の参入が始まり、現在、豪州の製糖企業11社(29工場)のうち、外国資本の製糖企業は4社(16工場)ある。この外資系製糖工場は、すべて、QLD州にあり、サトウキビの圧搾量ベースに占める割合は64.6%と過半数を超えている(表2)。
今後、KAIの製糖工場が稼働を開始すれば、豪州の製糖事業において、ますます外資の比率が高まることとなる。
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