ブラジル現地報道によると、軽油税引き上げに反対するトラック労働者組合が、政府に対して軽油税および高速自動車道の通行料金引き下げを求めて、道路閉鎖によるストライキを続けている。この背景には、穀物価格の低落により生産者の収益性が悪化する中で、トラック輸送側が輸送コストの増加分を価格転嫁できない窮状がある。
今回のストライキは、ブラジルの穀物生産の3割を占めるマット・グロッソ州と、北東部の主要輸出港をつなぐ主要高速道路163号線で2月18日に始まった。その後、道路閉鎖の動きは全国各地の幹線道路に拡がり、2月25日時点では全11州100カ所以上にまで拡大した。これにより、現在収穫期を迎えている大豆や、食肉、生乳などの輸送に支障を来たしたため、政府は2月25日午後、組合側と話し合いの場を設け、軽油税の6カ月の据え置きなどを提案した。しかし、結局、妥結には至らず、南部を中心に国内18カ所(現地時間3月3日現在)でストライキが続いている。
ブラジル動物性たんぱく質協会(ABPA)によると、ストライキに伴う農業生産への影響が表面化し、特に、南部の養鶏・養豚では、飼料穀物や燃料の調達が困難となった。こうしたことから、同国最大手の食肉企業であるJBS社は、パラナ州やサンタカタリーナ州の8つの農場を一時的に閉鎖したほか、他の大手食肉企業も一部農場での生産を一時的に停止したと報告している。
同国の穀物輸出の7割を占める南部の主要貿易港にもストライキの影響が及んでいる。サンパウロ州サントス港の影響は限定的とされているが、パラナ州のパラナグア港では穀物が例年の半分以下しか届かない状況が続いており、大豆などの輸出停滞が懸念されている。
なお、今回のストライキの鍵を握るとみられる次回の政府とトラック組合の話し合いは、近日中に首都ブラジリアで行われる見込みであるが、同地では7000人近くのトラック運転手が抗議デモを行うとされている。