アルゼンチンの大豆農家は、今年10月に実施される大統領選挙を前に、政府の財政を支えている穀物輸出からの税収増加促進の動きに対抗するため、大豆の農家貯蔵量を2014年の2倍以上に積み上げている。同国の生産者団体によれば、今年の農家貯蔵量は前年の340万トンから740万トンに急増としている。
アルゼンチンは、2014年のデフォルト(債務不履行)以降、国債市場での国債発行ができなくなっている。このため政府は、穀物輸出税(35%)による税収増を念頭に、農家に対して大豆出荷を促すための対策を講じている。今年に入り農家の穀物在庫を把握するため新たな規則を制定し、「サイロ・バッグ」の購入報告を農家に義務付け、意図的に農場内に大豆を貯蔵している農家に対しては、低利融資が可能となる政府ローンの受給資格をはく奪している。
また、大豆出荷を促す別の要因として、農家の輸出代金は米ドルから同国通貨ペソへの交換が求められることから、厳しい貿易制限により経済不振となる中で大豆出荷が増えれば、結果的にペソの下落を防ぐために必要な米ドルが中央銀行に供給されることになる。
大農場主で構成されるアルゼンチン農村協会(SRA:Argentine Rural Society)は、「政府は農家に対し、大豆の出荷を促進させるための圧力を常態化しようとしているが、大豆国際価格の下落やインフレなどを考慮すると、既に供給過剰になっている市場に対して農家が出荷を増やすことは困難」としている。
なお、直近のシカゴ市場を見ると、大豆の取引価格(2015年3月最終取引日の終値)は、トン当たり358米ドル(4万3318円:1米ドル121円)となっており、昨年同期の同538ドル(6万5098円)から大幅安となっている。
同国の農業関係者は、現在のフェルナンデス大統領の任期(2期8年)が満了する2015年10月の新たな大統領選に向け、輸出税など農業政策の見直しを希望している。
※「サイロ・バッグ」…
サイロ・バッグは、長さが60〜75メートルあり、最大250トンの大豆を最長3年間貯蔵できる。アルゼンチンでは、年間約30万袋のサイロ・バッグが販売されているとみられる。
パンパ地域の穀倉地帯で見られるサイロ・バッグ(2013年5月撮影)