EUの脱脂粉乳とバターの価格が下落している。2015年7月第1週の平均卸売価格は脱脂粉乳が100キログラム当たり179ユーロ(2万4523円:1ユーロ=137円)(前年同期比38.5%安)、バターが同299ユーロ(4万963円)(同16.3%安)となった。特に脱脂粉乳の卸売価格は、国際的な需給のだぶつき感などを要因に公的買入価格(同169.80ユーロ)の水準まで10ユーロを切っている。
EUが定めている公的買入価格は、CAP(共通農業政策)改革の流れの中で、あくまでもセーフティネットの位置づけであり、再生産を保証する水準とはなっていない。
生産者乳価が低迷する現状を受けて欧州議会は7月初旬、公的買入価格の引き上げ要請を欧州委員会に対して行った。これに対し欧州委員会のホーガン農業・農村開発担当委員は7月6日、現状の価格水準は供給過多からきているものであり、新たな酪農政策を打つことは、市場志向性に向けたわれわれの政策に誤ったシグナルを送りかねず、将来に禍根を残すことになるとし、これを拒否した。
EUでは、今年4月から生乳クオータ(生産上限枠)が撤廃されたことから、酪農生産者には需給調整への対応能力が求められている。このような中でユーロネクスト(欧州取引所連合)は2015年4月、生乳クオータ廃止後の生産者のリスクマネジメントの一つとして脱脂粉乳やバターの先物市場の運営を開始したが、7月時点で取引は行われていない。