乳製品の短期的需給見通しを公表(EU)
欧州委員会は2015年7月10日、農産物の短期的需給見通しを公表した。この見通しは年3回公表され、今回は3月に続く2回目となる。このうち、2015年の牛乳乳製品需給見通しの概要を以下のとおり紹介する。
生乳生産量を下方修正
2015年の生乳生産量は、前回(3月)の見通しでは前年比1.2%増とされていたが、今回の見通しでは0.9%増に下方修正された。これは、今年4月から生乳クオータ(生産上限枠)が撤廃されたものの、現行の生産者乳価が生産者の増産意欲をそぐ低い水準にあり、また、ロシアによる禁輸措置の継続など、短期的に乳製品需給が引き締まる要因が見込まれないことによる。
生産者乳価は低水準で推移
2015年5月のEU平均生産者乳価は、100キログラム当たり30.48ユーロ(4176円:1ユーロ=137円)と前年同月を18.8%下回った。ただし、その価格は加盟国間で大きく異なり、特にロシア向け輸出実績の多かったバルト三国では下落率が大きく、EU平均を2割以上も下回っている。現時点で、EUの乳製品需給を引き締める材料が見当たらないことから、今年いっぱいは低い水準での推移を見込んでいる。
チーズ生産の減少で、バター、脱脂粉乳仕向けが増加
2015年のチーズ生産量は、前年比0.5%増の941万8千トンと3月の予測から14万1千トン下方修正された。これは、アジア向けなどの輸出が伸びるものの、最大の輸出先であったロシアの禁輸措置継続の影響を要因としている。この結果、バター、脱脂粉乳向けの生乳が増加することで、同年のバター生産量は228万2千トン(同2.8%増)、脱脂粉乳生産量は150万1千トン(同7.8%増)と、3月の予測からそれぞれ5千トン、4万1千トン上方修正された。
また、為替相場がユーロ安で推移するとの見込みから、脱脂粉乳の輸出量は75万6千トン(同17.0%増)と1.3万トン上方修正された。なお、原油価格の低下は、原油輸出国の経済停滞の要因となるため、脱脂粉乳の主要輸出先であるアルジェリア向けの減少を見込んでいる。
一方、バターの国際需要は脱脂粉乳よりも強く、主要輸出先であったロシアの禁輸措置が継続されるものの、エジプト、サウジアラビア、米国などの強い需要により、輸出量は15万トン(同9.6%増)としている。特に米国でのバター不足により、EUとニュージーランドは同国向け輸出を大きく伸ばすと予測している。
【中野 貴史 平成27年7月14日発】
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