NZ最大手乳業フォンテラ、生産者乳価引き下げを発表
乳価引き下げと生産者への支援策
ニュージーランド(NZ)最大手の酪農協系乳業メーカーであるフォンテラ社は8月7日、2015/16年度(6月〜翌5月)の生産者乳価の支払見込みを、乳固形分1kg当たり5.25NZドル(441円、1NZドル=84円)から3.85NZドル(323円)に下方修正すると発表した(図1)。今年度最初の乳価引き下げとなり、今年度開始からわずか2カ月で26.7%もの大幅な引き下げとなった。
この結果、フォンテラ社が最終的に生産者に支払う金額は、配当金1株当たり0.40〜0.50NZドル(34〜42円)と合わせて、4.25〜4.35NZドル(357〜365円)程度になる(注)。
(注)通常、生産者は生乳出荷実績に応じてフォンテラ社の株式を取得する(乳固形分1kgに対して1株)。このため、最終的に生産者に支払われる金額は、生産者乳価に配当金を上乗せした金額となる。
また、今回の生産者乳価引き下げについて同社は、「供給過剰と需要低迷による、国際的な乳製品需給の不均衡に伴う乳製品国際価格の低迷が、今年度当初に見込んでいたよりも長く続きそうであるため」としており、生産者乳価の引き下げとともに、設備投資など支出計画の見直しにも取り組み、2016/17年度は、2015/16年度に比べて5億〜6億NZドル(420〜504億円)程度、設備投資額を抑制するとしている。
さらに同社は、生産者を対象として総額4億3000万NZドル(361億円)の融資枠を設置することを併せて発表した。これは、希望する生産者に対し、生産者乳価に0.5ドルを上乗せする形で融資を行うもので、2年間は無利子とし、生産者乳価が6.00NZドル(504円)を上回ってから返済義務が発生するというものである。現在のところ、融資の対象期間は2015年6月〜12月までとしているが、状況によっては、1月以降も引き続き融資の申込を受け付けるとしている。
2015/16年度の生産見通し
同社は、2015/16年度の集乳量(生乳生産量に相当)について、158万9000トン(乳固形分ベース、前年度比2%減)程度と減少を予測している。これについて同社は、生産者乳価の低迷が続く中、生産者の増産意欲が低下し、乳用牛の飼養頭数の減少や、濃厚飼料などの利用の減少が続いていることを要因としている。
また、同社は、「NZは元来、放牧経営により低コストで生乳を生産できるため、国際価格の低落局面にはある程度耐性がある。しかしながら、乳製品国際価格が現在の水準のまま推移し続ければ、生産者にとっては非常に困難なシーズンとなるだろう」とコメントしている。
【竹谷 亮佑 平成27年8月11日発】
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