NZ政府、酪農産業再編法を見直しへ
ニュージーランド(NZ)一次産業省は8月、同国の酪農乳業の産業構造などを規定する法律、酪農産業再編法(Dairy Industry Restructuring Act、以下「DIRA」という。)について、見直しを行うことを発表した。
フォンテラの集乳などを限定する競争促進条項が見直しの対象に
NZでは2001年、大手酪農協の合併により、集乳量シェア96%(当時)の巨大乳業メーカー、フォンテラが設立された。その際、DIRAで、乳製品の一元輸出の撤廃に加え、フォンテラの役割や透明性の確保、新たな家畜改良団体の設立などが規定された。一方、フォンテラが圧倒的な市場シェアを占める中で、市場競争を促進するための条項(以下「競争促進条項」という。)も盛り込まれた。同条項により、フォンテラは酪農家との取引に制限を設けないこと、また、フォンテラ以外の乳業メーカーは、一定量の生乳をフォンテラから調達できることとされた。さらに、競争促進条項では、フォンテラ以外の乳業メーカーの集乳シェアが、北島、南島のいずれかで20%を超えた場合、該当する「島」を対象に同条項を見直すとしている。2014/15年度(6月〜翌5月)、南島では、フォンテラ以外の乳業メーカーの集乳シェアが22%となったことで、DIRAの競争促進条項は見直されることとなった。
南島は競争促進条項の対象外の可能性
今後は、2016年3月1日までに国の商業委員会が、NZ一次産業省の助言の下、NZの酪農乳業の競争状態について調査報告書を作成する。その後、NZ一次産業相は、同報告書をもとに今後の取り扱いを検討し90日以内に、南島について、(1)競争促進条項の適用を継続、(2)競争促進条項の対象外とすることを前提に新たに移行措置を設定、(3)当面は競争促進条項の適用を継続するとともに、移行措置を設定―の対応方針を決定することになる。いずれにしろ、競争促進条項の対象外となれば、フォンテラとしては、他社への生乳の供給義務がなくなることなどから、より自由にビジネス展開することが可能となるため、大きなメリットとなる。
NZの酪農乳業界はさまざまな反応
NZのガイ一次産業相はDIRAの見直しについて、「フォンテラは引き続き多くの生乳を調達しているものの、北島でも他の乳業メーカーの集乳シェアが上昇しているように、酪農乳業界の競合は高まっている。集乳量は競合度合いを示す一つの指標であるが、それが全てではない。そのため、総合的に検証する必要があり、商業委員会がその役割を担っている。」といった内容のコメントを発表しており、明確な見通しまでは言及していない。また、NZ農業者連盟は、競争促進条項の撤廃の是非について明言していないが、中小乳業メーカーでありながら、独自の高付加価値製品の生産で成長してきた乳業メーカー、タツアを引き合いに出し、「いまだにDIRAは必要なのか。」という疑問を投げかけている。その一方、現地報道では、依然として一部の地域ではフォンテラと他の乳業メーカーとの競争が全く働いておらず、引き続き競争促進条項は必要という声もあり、フォンテラの市場占有率のさらなる高まりを懸念する見方もある。
【根本 悠 平成27年8月18日発】
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