ブラジルでは、昨年来、経済低迷や政治不信などを受け、米ドル高ブラジルレアル安が大幅に進んできた。こうした中、同国のジョアキン・レビ(Joaquim Levy)財務大臣は8月31日、2016年連邦予算案を議会に提出したが、この内容が歳入減による赤字見通しであったことから、市場は敏感に反応しレアル安が更に加速している。2015年9月11日時点では、1ドル3.87レアルとなり、2002年10月に記録した最安値に迫る水準となっている。
また、米格付け大手スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、ブラジル国債の信用格付けを投資適格級の「BBBマイナス」から、投機的水準とされる「BBプラス」に7年ぶりに引き下げた。ブラジル国内に内在する問題の解消が遅々として進まない中、レアル安に歯止めが効かない様相を呈している。
こうした米ドル高レアル安が急速に進む為替相場は、ブラジルの輸出面にはメリットをもたらすものの、農作物の生産段階にはデメリットをもたらす見込みである。ブラジルは、国内で消費する化学肥料の7割強をロシア、北欧などからの輸入に依存しているが、ドル高レアル安の為替相場を受け、農作物の生産コストにおいて多くを占める化学肥料の輸入価格が相対的に高くなることから、収益性の悪化につながる可能性が高まっている。
こうしたことから、米国農務省は、現在も収益性が芳しくない状況にあるトウモロコシにおいて、ブラジルの2015/2016年度のトウモロコシ生産を7900万トン(前年度比6.0%減)と見込んでいる。
ブラジルの肥料事情…
ブラジル全国肥料普及協会(ANDA)によると、2013年の肥料輸入量は前年比10.6%増の2161万9000トンとなった。輸入品目は、肥料の三要素とされる「窒素」、「リン酸」、「カリウム」の化学肥料が中心である。
同国が輸入に依存している理由としては、国内での肥料生産において商品流通サービス税などが40%課される一方、輸入肥料には関税がかからないことから、輸入肥料の方が価格競争力を有しているためとされる。
参考までに、2013年のマットグロッソ州のソヒーゾ市の大豆生産に対する肥料代は、生産者販売価格の38%を占め、パラナ州カストロ市ではトウモロコシ生産に対する肥料代が34%程度とされている。