欧州委員会は、先週公表した5億ユーロ(675億円)の緊急支援策について具体的な内容を公表した。主な内容は以下のとおりとなっている。
緊急支援策の予算の8割は、下落した乳製品価格に苦しむ酪農・乳業部門に充てられ、残りの2割は、同様に低価格に苦しむ豚肉部門などの対策に充てられる。
今回の緊急支援策では、脱脂粉乳、チーズ、豚肉の3品目を対象として民間在庫補助(PSA)が行われることとなった。PSAは、市場価格が下落した場合に製造メーカーなどが対象品目を市場から隔離するために在庫として保管した費用の一部を補助するものである。現在、PSAは脱脂粉乳とバターについて実施されており、2016年2月29日まで実施されることになっている。
今回の新たな脱脂粉乳のPSA(以下「新PSA」という)は、既存のPSAと並行して異なるルールで実施される。新PSAでは、補助率が現行のPSAの1トン・1日当たり16セント(21.6円)から同36セント(48.6円)へと倍以上に引き上げられる。一方、市場隔離する期間は、現行の90日〜210日に対し、1年間とされ、満期前に放出した場合には罰金が課される。乳業メーカーは脱脂粉乳をPSAにより保管する場合、2つの選択肢があることになる。
チーズについては、10万トンを上限として再びPSAによる補助が行われることとなり、10万トンの枠は、チーズ生産量に応じて各国に振り分けられた。これは、ロシア禁輸を受けて2014年9月に実施されたチーズの前回のPSAでは国毎の割当が設定されていなかったため、ロシア禁輸の影響をほとんど受けていなかったイタリアが、補助対象数量15万5千トンの8割以上を国内事情から申請し、欧州委員会がわずか4週間で申請を打ち切ったことに対する対応によるものと考えられる。
国毎の割当を設定したものの、すべての生産国がこのチーズのPSAを利用することにはならないと考えられることから、欧州委員会は、3カ月後に利用状況をみて割当量を再配分するとした。
豚肉についても、再びPSAが実施されることとなった。豚肉のPSAは、今年の3月から8週間に渡って実施され、6万トンの豚肉が市場隔離された。欧州委員会は、価格の下落を止め安定させたと総括しているが、豚肉価格を十分に引き上げるまでには至らず、PSA打ち切り後も再度の補助を求める声が後を絶たなかった。今回の豚肉のPSAでは、業界の強い要望もあって、ロシア禁輸の影響を大きく受けたラードも対象に加えられた。
また、昨今のEUに押し寄せる難民に対する栄養対策として、3千万ユーロ(40億5千万円)相当の乳製品を市場から提供するとした。