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一人っ子政策廃止による育児用調製粉乳需要への影響(中国)

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 10月29日に閉幕した中国共産党第18期中央委員会第5総会(5中全会)で、1979年から続いてきた一人っ子政策の廃止と、すべての夫婦が第2子までもうけることができるようにすることが採択された。これにより、30年以上続いた人口抑制政策が終了することになり、育児用調製粉乳(以下「育粉」という)をはじめとする国内外の育児ビジネス業界は商機と捉える声が多い。
 米国では、CNN放送が10月29日、中国の育粉需要は今後拡大すると報じ、中国で育粉事業を展開する米国企業の株価は4%上昇となった。英国では、市場調査会社ユーロモニターインターナショナルが、2020年の中国の育粉市場は、2014年の倍以上となる406億米ドル(5兆344億円:1米ドル=124円)に拡大すると予想している。
 一方、中国の新浪財経新聞は10月29日、5中全会の閉幕に合わせ、「一人っ子政策廃止により2人目をもうけたいか」というインターネットアンケートを実施した。これによると、もうけたいと回答した者は33%、もうけないと回答した者は38%、経済などの状況によると回答した者が29%であった。もうけないと回答した理由は、(1)第2子をもうけることで経済的な負担が大きくなること、(2)両親の介護のことも考えると経済的に厳しい、などであった。
 オランダのラボバンクによると、中国では、2013年における0〜3歳用の育粉消費量は、対象年齢1人当たり年間12.9キログラムとされている。これを、中国における一般的な規格である900グラム缶に換算すると14.3缶に相当し、年間消費額は、中国の売れ筋価格帯である300元(6000円:1元=20円)で試算すると4290元(8万5800円)となる。なお、日本の同消費量は8キログラム(900グラム缶換算で8.9缶)となっており、年間消費額は、日本の800グラム缶の平均価格である2700円で試算すると2万7000円と中国の3割程度である。
 英国オックスフォード大学准教授のStuart Gietel-Basten氏は、従前より第2子の出産が認められていた一部の都市部などを中心に、出産の先延ばしや、あえて1人しかもうけないことを選択する者が増加しているため、一人っ子政策が廃止されても、長期的には人口増加に大きな影響はないとしている。しかし、短期的には四川省のように、一人っ子政策を徹底していた内陸部の地域でベビーブームが発生する可能性も指摘している。また、人口増加に大きな影響はないとはいえ、都市部を含め、今まで1人しか許容されていなかった国民が、今回の措置により、2人目をもうける選択肢を得たということは忘れてはならないとしている。
 中国は、0〜3歳以下の乳幼児が7000万人いるとされ、巨大な育粉市場を有している。
【伊澤 昌栄 平成27年11月10日発】
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