NZ商業委員会、酪農産業の競合度合いはいまだ不十分と発表
ニュージーランド(NZ)の商業委員会(Commerce Commission、以下「CC」という。)は11月、酪農産業再編法(Dairy Industry Restructuring Act、以下「DIRA」という。)の競争促進条項見直しに関する草案を公表し、NZの酪農産業について、「いまだに競合の度合いは不十分」と結論付けた。
(DIRAの見直しについては既報【
NZ政府、酪農産業再編法を見直しへ 】参照)。
酪農関連:可能性は低いものの、酪農家への低乳価の強制を懸念
CCは、同草案の中で、「フォンテラはいまだに市場支配力(マーケットパワー)を持っている。」としており、酪農と乳業、それぞれにおける競合状態について、分析結果を公表している。
まず、酪農の競合状態に関するCCの懸念は、比較的軽微なものとなっている。CCは、フォンテラは市場支配力を有しているとはいえ、他の乳業メーカーの酪農家からの生乳調達を妨げるほどの能力はないとしている。また、酪農家に対して、低い乳価を押し付けるといった「力の行使」についても、フォンテラが酪農協系乳業メーカーであることを踏まえ、そうした動機はないとしている。このような分析をしながらも、CCは、仮にDIRAの競争促進条項が撤廃された場合には、フォンテラが「力」を行使する可能性も残されているとしており、同条項による一定の制限が機能していると評価している。
乳業関連:高乳価による他の乳業メーカー排除を懸念
一方、乳業については、CCは、酪農よりも、その競合状態について、懸念を示している。CCは、現在の乳業の競合度合いは限定的であることや、DIRAの競争促進条項によって、フォンテラが他の乳業メーカーに販売する生乳の価格上昇が抑えられていることを指摘している。そのため、仮にDIRAの競争促進条項が撤廃されれば、フォンテラが他の乳業メーカーに高い乳価で生乳の販売を強いる可能性が残されているとしている。また、フォンテラが、高い乳価や長期契約で酪農家を囲い込む可能性についても懸念を示している。
CCは、DIRAの維持と新たな勧告を発表
以上のことから、CCは、NZの酪農乳業は、いまだDIRAの競争促進条項を撤廃するような競合状態になっていないとしている。また、同条項に基づく措置の維持に係る費用と効果は、ほぼ同程度であるが、現時点で同条項撤廃による競合度合いの低下というリスクを取るべきではないとしている。
その上でCCは、いくつかの勧告を行っている。まず、同条項見直しの基準となるフォンテラの集乳量比率について、現在は北島・南島のいずれかにおいて、同比率が80%を下回ったときとしているが、これを70%まで引き下げるべきとしている。また、同条項の適用期限を2021/22年度までとする必要があるとしている。一方、現在の集乳量比率に基づく同条項見直しの指標そのものは、単純かつ適切なものであり、新たに同条項見直しの指標を設けるべきではないとしている。
今後CCは、草案に対する意見を聴取した後、2016年3月1日までに、最終報告書を公表することとなっている。その後、NZ一次産業相が、同報告書を受け、DIRAの今後の取扱いを決定する。
【根本 悠 平成27年11月20日発】
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